第8話
「遥…! 」
遥の父親は遥の名前を呼びながら、僕に向かって歩み寄ってきた。
彼は、鏡に閉じ込められた間、ずっと遥を心配していた。
そして彼は、鏡に閉じ込められていたことに、深い後悔を感じていた。
「遥を、守れなかった… 」
遥の父親はそう呟くと、煙のように静かに消えていった。
僕は、鏡を見つめながら放心していた。
鏡の中の父親を救うことが出来た。
でも、遥が消えてしまった。
多分、父親の代わりに鏡の中に飲み込まれてしまったんだ。
僕には、愛する遥を助ける術が無い。
すべてが終わった…そう思った。
その時だった。
鏡に映る自分の顔が、再び歪み始めたんだ。
そしてあの少年、いつきの顔が現れた。
「僕を… 置いて… 行かないで… 」
いつきはそう言うと、霧のように消えてしまった。
鏡に閉じ込められた少年・いつきは、まだそこにいた。
遥の父親では無かった。
彼は、まだ救われていない。
僕は再び、鏡に引き寄せられるような感覚を感じた。
しかし僕は、古民家から逃げ出した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます