第27話
「ただいま」
涼は家に帰り、家族との夕食を済ませた。そして、風呂と歯磨きをしてベッドへ向かった。
「さぁ、今日で決着をつけてやる」
目を閉じると、ニーグリの世界へ招集された。そこは、斉木さんの店があった所だった。涼は斉木さんの最後の言葉を頭に浮かべた。
「バーカウンターの4715だ、決して忘れるな」
涼の目の前には、斉木さんがいた長椅子と机。その横にバーカウンターがあった。斉木さん曰く「お酒は嫌いで飲まなかった」とのこと。
「バーカウンターは暫く使っていないのか」埃を被っていた。涼はその場にしゃがみ込む。キョロキョロと何かないか見て回る。発見したのは、黒の金庫。その金庫は4桁のダイヤル式で合わせる機種だった。
「斉木さん、あなたが残したもの。俺が引き継ぎます」
4桁のダイヤルを合わせる。ガチャリと音が鳴った。金庫の片手式ハンドルを回し、中身を確認してみた。金庫の中には古ぼけた紙、便箋と黒い金属の小手が入っていた。涼はまず、便箋の中にある紙を開き、書いてある文章に目を通した。
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
涼くんへ
君にこの小手と異能を託す。小手と異能の力が合わされば、君の無くなってしまった右手の代わりになるはずだ。なぜ?こんな手紙を残したか疑問に思うだろうね。私も疑問に思うよ。しかし、これは小手と異能を売った田中という男との約束なんだ。涼くんにこれを手紙と金庫で残せと言われてね。しかも期日まで設定していてね。私しては、すぐにでも君に知らせたいが、プレゼントとして有効活用してほしい。
斉木
※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※
「田中一体何者なんだ。とはいえ、斉木さんありがとうございます。この力で右腕を取り戻し、グーンを倒す」
涼は古ぼけた異能の文字を読んだ。
「我、影の使い。義手の呪い。瞬く間に」
小手から黒の触手が伸びた。それは涼の無くなった右腕付近を突き刺した。痛過ぎて大きな声を上げた。本の数秒で痛みが和らぎ目を開けると、右手の小手が自由に動く。小手の内部を除くと左手では掴めず「どうやら影で形成された手」のようだった。
「やっと動かせた、これでガントレットとグーンの弓で戦える。おい、タールそこにいるのか。おい、タール。返事をしてくれ」
「うるさい、小僧だな。私はグーン討伐は手伝わんぞ。」
「いや、さっきの稽古のお礼ができていなかった。ありがとうな」
「全く、お前は意外と素直な奴なのだな、だが一切力は貸さんぞ。おっと噂をすれば、私は姿を消すぞ。まぁ、影舞とその新しい腕で何とかするんだ」
その言葉を残して、タールの霊魂は見えなくなった。前方からもの凄い勢いでこちらに突っ込んでくる物体が見えた。それは地面に落下し土埃を撒き散らした。
「佐川、今度こそ逃がさんぜ」
「ふざけんな、今度こそケリつけてやる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます