第28話
「間違いない」巨大な体躯、グーンだ。グーンの目は涼をしっかり捉えていた。
「いい加減、お前の顔も3回目だな。そろそろ終わりにしてやるぜ」
「そのつもりだ。お前の顔は見飽きてる。斉木さんの敵討ちもさせてもらう」
「斉木? 誰だそりゃ」
「お前...! いや、奇妙な怪人は人の名前を覚える必要もないし理解もできないらしい。どうせ、ここで仕留めるからな」
「はぁ? それは無理だぜ。なんせ俺はグルメ担当グーン。食こそ全てだからな」
「そんな話どうでもいい!!」
涼は右手の小手にガントレットを呼び出し、グーンに殴りかかった。涼の拳とグーンの拳が激しくぶつかり合う。
「ん...? 右手が生えてる。おかしいな俺が食べたはずなのに」
グーンの力に押され、涼は後退した。続け様に左腕にタールのバリスタを呼び出し、矢を連射した。グーンは防御姿勢を取った。涼はここだとばかりにガントレットの増幅の力で、矢の速度を早くした。鋭い矢がグーンの体を抉り、1本1本が皮膚に深く食い込んだ。
「うぐ...てめぇ」
「そんな睨んでも関係ない、斉木さんはもっと辛かったんだ。その苦しみをお前にも味わわせてやる」
「斉木なんて、知らねえよ。だがな、お前は前回俺に負けて逃げたことを忘れてないか? この本気の姿でな」
グーンの体が分厚くなり、岩石の鎧を纏った姿になった。右足を強く踏ん張る姿は相撲力士を彷彿とさせる。
「お前は何か誤解しているぜ」
グーンは両足を強く蹴り上げ、蛙飛びのようにこちらへ飛び込んできた。スピードは早く、目で追うのがやっとだ。
「…(く...足が遅いのをリカバリーできるのか。あんな見た目でこんな早く飛び込んでくるなんて、だが絶対負けない)」
涼は右手に如意棒を出現させ、グーンの飛び込みに合わせた。如意棒の先端でグーンの腹の中心を突いた。如意棒の耐久値は持つ訳もなく、先端からひび割れた。武器を投げ捨てると間髪入れずにタールのバリスタを1発発射。それを右手のガントレットで掴み、矢を巨大化させ破壊力と推進力を上げた。
「これでどうだぁー」
グーンは真正面から涼の攻撃を受けた。腹の鎧が少しだけ剥がれていた。グーンは涼と少し距離を取る。
「ひびが入ったか。ははは、無駄だ、俺の体はかなり硬い。そんな攻撃では倒せんわ」
「硬い? そんなの関係ない。この技で決める」
グーンの中心に影の隙間が見える。そこに目掛け、右拳を勢いよく、突き立てた。それは影の刃となり、グーンの全身を切り刻んだ。
「うぉ、この技はまさか。いや、サーザス様の言う通り選ばれた奴だったな。だが、まさか…そんなことができるのか……」
グーンは再び涼に向かって、飛び込み攻撃を喰らわせた。右のガントレットで防ぐが、グーンの左手でガントレットを強く握られてしまい、動かすことができなかった。
「さぁ、お前のとっておきは終わりだな。なら次は俺のとっておきを見せてやるぜ」
グーンの右手がブルブルと振動を始めた。それはスピードをあげていく飛行機のエンジン音に似ていた。
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