第33話 中国人たち2
深センでの滞在期間は一週間。
最初の計画とは完全に違ったものになってしまったが、一応向こうが押しつけて来る携帯の機能を確認しないといけない。
全員で集まり英語で会議をする。
私はもっぱら聞き役だ。
必要な機能の一つ一つが提供された携帯にあるのかどうかを確かめていく。
大事な機能の一つが使えないことが分かった。データの出力パイプが狭すぎて機能を実現できないと説明される。
後でこの機能が実現できないのは問題ですねと、クソTとY氏に言ったら、できると言っていたじゃないですかと言い返される。
・・え?
できない理由をあれだけ説明されていたのに何を聞いていたのこの人たち。
しかし私は英語のヒアリングは得意じゃないので、はいそうですねとだけ答えておく。
きっと私の聞き間違いだろう。特にこのクソTは海外との折衝を売りにしている人なのだから、たとえ "write" を "wite" と書いてしまう人でもヒヤリングはできるだろう。
そう思っていた。
結局私が聞いたのが正解であったことが後で判る。
つまりこの二人は英語が特異なフリを必死でしていただけだったのだ。それで人生が通ってしまうのが不思議だが。
いつでも上から目線の無能たち。どうして私が出会う人間はみなこうなのだろう。
・・ああ、胃が痛い
皆で昼食に行く。
安物のうな丼を食わせる店だ。
中国にもウナ丼があるのだと驚いた。
当時は知らなかったが中国奥地のウナギ養殖場ではエサとして安く集めた人間の死体を使っている所がある。
だから今なら私は中国では絶対にウナギは食わない。
そうこうしている内に一週間が過ぎた。
Y氏は先に日本に帰っている。
クソTと一緒に空港に行き、ゲートの前で搭乗時間を待つ。横でクソTがノートパソコンを広げている。
・・疲れが出て寝込んでしまった。
目が覚めると周囲の椅子に人が誰もいない。
すでに飛行機は離陸寸前だ。ゲートに飛び込む。
自分の席を見つけるとクソTが涼しい顔でパソコンを使っている。こちらにちらりと目をやり、何だ起きたのかと残念な顔をする。
寝ている同僚を置いて自分一人だけ先に乗る。普通の人間ならば乗り逃がさないように起こすものだ。このサディスト野郎は気づかなかったフリをして、私を香港空港に置き去りにしようとしたのだ。
何という透徹したサディスト精神。そうやって一生の敵を作り続けることに意味はないのに。
帰りの飛行機は熟睡していたので酔わなかったのは助かった。
ー世の中に寝るより楽はなかりけりー
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