第22話 詐欺師
一番最初の会社の麻雀仲間だった人に連絡を取ってみる。
今では人間がやる麻雀は人が集まらず、スマホでの麻雀ゲームだけをやっているということだ。これも時代の仇というものなのか。
この人が骨を折って仕事を取ってくれた。
F社で作るちょっとした携帯情報機器の仕事だ。ハードも含めての作業ということで誰か一緒にハードができる人はいないかとの事であった。
ハードができる人と考えて、N社が思い当たった。
この話を持って行ってみる。するとN社長はその方面の熟練技術者のI氏を紹介してくれた。
しばらくの間N社長もいれて三人で会話をする。
I氏は会社というものは実質死んでいても外からではわからないよね~と怖い話をする。
嫌な予感がした。
わざと気さくに振舞い、陽気なところを見せる。
相手と人間関係を深めておけばそれだけ裏切られる確率が減るからだ。
二人でF社に出かける。
恐らくF社の担当者もこちらを見てしまったと思ったに違いない。実はこの話には裏があったのだと今にして思う。
「この仕事に関しては私に任せてくれますか?」
I氏はそう言い放ち、会議の主導権を握ってテキパキと話を進める。
すべてが終わってみると、私の担当する部分が無くなっていた。
おいおい、仕事の横取りかよと思っていたら、起動制御用のマイコンのファーム部分を渡して来た。
ほんのわずかの仕事だ。がっかりしたがまあ仕方がない。
相手を信じて任せた私が良くなかったのだ。
仕事を持ち帰り調査を進める。
全体で実工数が20万円というところか。それじゃまったく旨味がないので、無理に百万円に膨らませる。仕事をつないだ手数料込みだ。
見積もりを出してもI氏はクレームをつけない。
またもや嫌な予感がした。
ボラれても文句を言わないのはお金を払う気がないからだ。
仕事を進める。連絡を取る。また仕事を進める。連絡を取る。
作成物を送付する。
基板はいつでますか?
聞いてみた。I氏は何やら口を濁す。F社の対応が鈍くてねと同じ言い訳を繰り替えす。
何度も聞いているとやがて返事もしなくなった。
ついに痺れを切らしてF社の知り合いに訪ねてみる。
返って来た答えは驚きだった。
「君に悪い知らせです。プロジェクトは中断され、お金はすでに支払われています」
どういうことかとI氏に連絡を取ると、電話に出ない。
トラブルである。
話を再構成すると次のようなことではないかと思う。
まずF社はこの人に他の仕事を頼んでいた。だがその内容が酷かったために、プロジェクトを中断してこの人を放り出した。そして他の会社を探した。その行着いた先が私だったのだ。
その私がまたこの人を連れて現れたのだ。背景を知らない私にその場で断ることができずに一度はプロジェクトを依頼に出した。
そして早々にこのプロジェクトを中断した。
ここまでの請求書を出して報酬を受け取る。
この人はそのお金を独り占めしようとしたのだ。
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