第21話 それでも歩く

 生きる目的が無くなってしまった。

 見知らぬ街で火が暮れた。行くべき場所も無ければ帰るべき故郷もない。

 愛する者もいなければ、愛してくれる者もいない。


 しばらくは眠り続けた。

 体がだるい。どこか壊れているのが自分でも分かる。

 部屋中にうず高く積もった本の自炊を始まる。一冊一冊裁断しスキャナで取込みPCに記録する。死ぬまでにこれをすべて読むのは無理だろう。

 計算では今までに漫画も含めて六万冊は読んだ。こういった知識は少しは身についているのだろうか?


 それでも体は勝手に生きていく。腹も減るし、貯金もどんどん減る。

 このままでは飢え死にする。

 N社に事業再開のメールを出してみた。

「○○さんにピッタリの仕事があったら必ず紹介しますから」

 N社長はそう返して来た。もちろんこの人お得意のリップ・サービスだ。

 N社もクソTが引き起こした被害のお陰で青息吐息だ。他に仕事を回す余裕はない。

 最終的にN社は回復し、生き残っている。


 G社のN部長にも会ってみる。すでに課長から部長になっている。

「どうです、ウチから順調に仕事でていますか?」

 笑いながら言われた。

 いいえ、もう数年そちらからは仕事を貰っていませんが?

 どうやらこの人はもう担当部署にはいないようだ。

 何か齟齬があるようだが、突かずに引っ込む。


 なかなか厳しい。

 だがまだ私は楽観していた。きっと仕事は見つかると。

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