第11話 殿様出勤
新しいプロジェクトのリーダーは山登りが趣味のサボリーマンであった。
口癖は「ポーティング作業は普通は大勢でやるもの」である。
ポーティングとはメーカーが出すCPU-OS開発プラットフォームを目的のハード基板上で動くように改修する作業である。基板ごとに周辺の回路が異なるのでこれらをすべて繋いでやり、特殊なチップが載っていればこれらの制御を組み込んでやる。
この作業量が膨大になるかどうかはハードの作りに依存する。
だがプロジェクトが遅れているのは100%この人の責任であった。
最初は正午に来てお昼を食べてから仕事を始め、夜十時に帰っていた。毎日出勤時間は1時間づつ後ろにずれて、最終的には夜十時に来て夜12時に帰るようになった。実働2時間である。
すみませんと職場に顔を出すと、作業に苦しんでいる作業者が、いてくれるだけでも助かります、なんて言うものだからそれを真に受けてちっとも反省はしなかった。
午後から来ていた連中に「私ら12時間働いたのだから、貴方は明日の朝10時に帰るはずでは?」と言われるとへらへらと笑ってごまかしていた。
その結果がすでに述べた言い訳である。
世の中の人間の大部分は上手い言い訳が出来ればどんな失敗をしても許されると思っているフシがある。この人もそうだった。
結局最後は怠業を理由にリーダーは契約を打ち切られるのだが、そのときも次のように言い訳をしていた。
「自分が夜遅く来るのは、この会社での無理な残業により睡眠障害を起こした結果である」
自分では上手く言い訳したと思ったのだろうが、それでもクビを逃れることはできなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます