第9話 言い訳
クソTの失踪がはっきりしたことでプロジェクトの破綻は明確になった。
社長が後始末に奔走している。
A社の連中が呼ばれ、詰問に付き合ってくれとなぜか私が引っ張り出された。
タダ働きもいい加減にしてくれよ~。ぶちぶち言いながら出かける。
会議室で社長と一緒にA社の連中と向き合う。
彼らは言い訳を始めた。
「そちらから受けた仕事の金額が安すぎたので海外の会社に依頼したんです」
動かない回路を作ったのは値段が安かったからだという理屈だ。
こんな言い訳が通るわけがない。
そう思っていたら社長が頷く。
これを通すのかアンタは。呆れた。借りた家がボロだったから放火したと言ってるようなものだぞ。
ここで責めないで誰を責めるというんだ?
第一アナタの隣でこれを聞かされている私はタダ働きで後始末に駆り出されているんだぞ。私に失礼だとは思わないのか。
この社長も文句を言わない人間にはあらゆることを押しつける人間だった。
結局A社はそれで無罪放免になった。信じられない話である。
動かない基板に掛かった代金の全額弁償ぐらいは最低限させるべきなのだ。
この社長もどこかおかしい人だった。
プロジェクトそのものは別の人間が担当になった。
毎週一度客先に行って遅延の言い訳をするのが役目だ。
帰って来ると、最近夜眠れないんですと、こちらに愚痴をこぼす。
どうも扱いが変だ。もしやこの人は私がハードの世話をしていると思っているのだろうか。向こうは私がハードとソフトを完成させるのを待っていて、こちらは向こうがハードを出すのを待っている。
これでは永遠にプロジェクトは完成しない。
やがて精神を壊した担当者が辞めてしまい。次の人に変わった。新しい担当者も同じような有様になり、これはもう駄目だなと思ったときにプロジェクト自体が潰れた。
相手先の会社がプロジェクトを中断したのだ。
その会社の課長からメールがプロジェクトに関わって来た全員に送られてきた。泣き言メールだ。
その内容は・・。
「あなた方のお陰で私は左遷されました。お陰で私の人生は完全に終わりです」
このメールが本当に届くべき相手は北京にいる。
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