第7話 ライバル令嬢たちが素晴らしい!
翌日、しっかり寝たリリアナはスッキリと目覚めた。
頭はスッキリしてはいないけども、乙女ゲームのからくりは判明した。問題は別に私は追い詰められても困ってもいない事。
うん?いや、困ってはいるか・・・。
攻略対象たちがうざい、本当にとっても、しかも揃いも揃って高位の方で文句も言えない!!
うん、ストレスだわ、あの方たち。アリアンローズ様はミリアネア様たちに訳の分からない言いがかりをつけてくるし本当にストレスでしかないから、良いタイミングなのでアリアンローズ様たちに相談しよう!と心が決まった。
アンに準備を手伝って貰い、朝食に行くと両親が揃っていた。お兄様はまだかな?
「おはよう、リリ」
「おはようございます!お父様、お母様。
お兄様はまだなんですか?」
「いや、ジャスティンは王太子殿下からの呼び出しで早めに学園に向かった」
「まあ、何かあったんでしょうか?」
「ふむ、まあすぐ発表されるだろうが、近々隣国から留学生を迎えるのでその相談だろう」
お兄様は男爵子息ながらも、学園に首席で入学したことから王太子殿下の目に適い、側近として王太子殿下に仕えている。留学生と言うことは国賓扱いだろうから、学園にまだ在学されている王太子殿下の管轄になるのだろう。
兄も大変だなぁ、と他人事なので同情だけしつつ、今日も朝食が美味しい。この世界、ご飯が美味しいのは本当に良かった!!
しかも洋食だけでなく、日本でいう中華や和食っぽいものもあるから、流石日本の乙女ゲームの世界!だ。
いつも通り登校し、クラスでアリアンローズ様とファナ様にお昼にお母様の実家、ミラナ伯爵家の事についてお話したいと言うとおふたりとも快諾してくださり、いつものガゼボではなくミリアネア様がカフェの特別室を予約してくださるとの事だった。
ファナ様と2人でカフェの特別室に向かう途中、やはり男性からの視線を感じるが、「気にしない!」と振り切って進む。見ない、見ない。
特別室に着くと、思わず安堵のため息が出る。
「リリアナ?君がそんなため息をついて、どうかした?」
「ティティリエ様!・・・失礼しました。
ちょっと、最近知らない殿方に見られることが多くて、緊張していました」
「なるほど、だからご母堂のご実家の話なのだな」
「はい、ティティリエ様はご存知なのですね」
「高位貴族にとっては常識だ。まあ話は揃ってからにしよう、ファナもそれでいいか?」
「はい、私も父から少しだけ聞きましたので・・・」
そう言うと、ファナ様は少し落ち込んでいる様子だったが、続々とみんな集まって来たので聞けなかった。
まずは食事をと、サーブされながらミリアネア様が音頭を取って下さる。今日も楽しく、美味しいランチだった。
「デザートの前に、リリアナ様のお話しを伺いましょう。
大事なお話しのようですから」
「はい、みなさまお時間いただきありがとうございます。
昨日、本来であれば私にはまだ明かされてはいけないミラナ伯爵家の話しを母から聞きました。
ミラナ伯爵家の話しは、みなさまご存知でいらっしゃいますか?」
全員が頷く中、ファナ様が珍しく、声を上げる。
「あ、あの!わ、私が全ての発端なのです・・・!」
「ファナ様?」
「リリアナ様、ごめんなさい。私、リリアナ様に魔力制御を教えたあの日まで、ミラナ伯爵家の話しを知らなかったのです。
あの時リリアナ様から放たれた魔力は、同性である私にも魅力的でクラクラして動揺してしまいましたの。そして、不味いことをしてしまったと分ったので、そのまま帰宅せず父の務める魔塔に向かい、全てを話しました。
勿論、父には激怒されましたし、不勉強なのを反省するために山のような課題も出されましたが、まだ魅了の力が発揮されたと確定した訳ではなかったので要観察として保留になりましたの・・・」
何度もごめんなさい、と涙ぐむファナ様を宥めつつ周りを見ると状況は全て共有済みのようだった。
「リリアナ様、ごめんなさいね。
当事者のあなたを排除するつもりはないのですが、魅了の力に関しては扱いが難しいこともあり、私たち高位貴族の間でも対応に悩んでおり、決定できてなかったの。
でも、この2~3週間で事態は判明して来ていますし、大変残念ながら高位貴族はその魔力量ゆえに魅了への対抗が容易なはずなのに、本当に情けないことに第二王子筆頭であなたに魅了されているようですわ・・・」
ミリアネア様の言葉の端々に王子たちへの文句が見え隠れするが、やはり魅了されているのだと、思いのほかショックを受けている自分に吃驚した。
「っ!やっぱり、私のせいなんですね・・・。
みなさまにご迷惑おかけして申し訳ありません」
「違いますわ、リリアナ様は悪くありません!
ミリアネア様も仰ったでしょう?わたくし達高位貴族はそもそも魔力が高く、魅了などには滅多にからないものなのです!」
私の手を取り、そう熱弁するアリアンローズ様に感動して涙が出そうになる。
「リリアナ、魅了はね、そもそも君に惹かれているから、それが増幅されるんだよ。
だから、彼らの状況は彼らの自業自得なんだ」
「全くですわ、あの筋肉バカ、きっと脳まで筋肉なんですわ・・・」
「フランルージュ様、やはりゼス様は脳筋なのですね」
思わずスンっとなってしまったのは仕方ないと思うのです。
「脳筋、それですわ!まさしくゼス様のための言葉ですわね」
「あ、あの、みなさま怒ってはないんですか?」
「怒る?どなたに対して?ああ、単細胞な殿方たちには怒っておりますわよ?」
「怒るというより、呆れますわね~」
ミリアネア様とアリアンローズ様の言葉に他の方々も同意されるのを見て、本当に、ホッとして涙が出てきた。
「良かった、私、みなさまに嫌われたら・・・と」
「まあまあ、リリアナ様ったら~ 可愛い!」
「私の方が嫌われるかと・・・」
「ないです!ファナ様、大好きですわ!」
ファナ様とアリアンローズ様に抱き着かれ、幸せだ。
「まあ、ズルイですわ!私も混ぜてくださいませ!」
「じゃあ、私もいいよね?」
「みんなで、ですわ!」
嗚呼、本当にこの方々は温かい。こんな所、先生や大人に見られたら怒られてしまうかもしれないけど、私を励ますためにみなさま抱き着いて、慰め、優しい言葉も態度もかけて下さる。
高位貴族のご令嬢らしく非常に優秀で厳しい一面もあるが、本当にみなさま優しくて。なのに、あの婚約者たちは大事にしないのだから、解せない。
正直、こんなにも得難い方々なのに。
「リリアナ様、難しい顔をされてますわ?」
「あっ、いいえ、そのみなさまとお会いできて本当に幸せだな・・・と」
私の一言に、みなさまの照れ笑いと共に「人誑し」と言われてしまったけど、本当に嬉しいんですもの!と開き直ってやった!
後悔はない!!
一旦大事な話は終わったのでデザートをいただきつつ、お話している時にファナ様から現状打開できるかもしれない提案があった。
「実は魔塔に魔道具研究の方が今度いらっしゃるのですが、リリアナ様の魅了を抑えるものなどないか聞いてみませんか?」
「ええっ、そんな凄い魔道具あるんですか?」
「正確には、魔力を抑える魔道具になるのですが、昔からあることにはあるようなのです。
ただ、特殊なものなようなので私も詳しくは分からないのですが、父よりリリアナ様が望むのであれば魔塔へお誘いするように言われていますの」
「是非、お伺いしたいです!」
食い気味に返事をする私に、ファナ様は笑いながら魔力で小さな鳥を作り出して飛ばした。なんと、指定した場所までメッセージを送り届ける魔法の一種らしい。いいな、羨ましい。
私も早くヒロインや魅了などと言うものから解放されて魔法を使いたい・・・!!
その日の放課後、ファナ様から当日そのままでもいつでも歓迎すると返事が来たようなので、迎えの者に魔塔へファナ様と向かうと伝言を頼んで一緒に向かった。
魔塔は昔は本当に「塔」だったらしいが、現在は王宮の西翼、多くの魔術士や魔術の研究、魔道具の研究が行われている一帯をまとめた総称だ。ファンタジー感にこっそりワクワクしていた。
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