第4話 前世からライバル令嬢推しだった
前世でプレイした「
どの令嬢方も正々堂々と淑女として対決し、負けた後は潔く婚約者の立場を返上してヒロインの成長を助けてくれる。
そして彼女たちとのコミュニケーションを取る事も大事なゲームバランスが珍しく、彼女たちがそれぞれに素敵でやり込んでしまった。
そして攻略対象は王道を押さえる無難なラインナップとして王族である第二王子、公爵や侯爵令息に騎士、後輩と全て押さえてあるものの私の好みは居なかった。
そう、別に嫌いじゃないけど、コレ!!と言う推しはなかった。
むしろライバル令嬢の方々がツンデレだったり、クーデレのヅカ令嬢だったりで、可愛くて・・・!
攻略対象たち、こんな出来た婚約者たち放り出すとか馬鹿じゃね?!って思っていました、本当に。
熱が下がり、目が覚めた時改めて「ああああ、なんで私がヒロインなんだ・・・!!」と凹んでしまった。ちょうど侍女が部屋に居なくて良かった、絶対「お嬢様がおかしくなられた!」って言われるところだった。
少し落ち着いた所でお母様とお兄様が来てくれた。
「リリ?リリアナ、熱は大丈夫ですか?」
「お母様」
「珍しくお前が熱を出したと聞いて心配したぞ?」
「お兄様も・・・ ありがとう、大丈夫です。
たぶん、ちょっと色々あったから吃驚しちゃったんです」
苦笑しながら言うと、お兄様はちょっと考えるような表情をしていたが、母が「まあ」と小さく笑ってくれた。
「リリはほぼ丸一日寝ていたから、軽い食事と水分を取ったらまた休んでね」
「そうだな、明日はブランシュもリリが心配で来ると言っていた」
「ブランシュ様が!じゃあ元気にならないといけませんね!」
「ふっ、その様子なら大丈夫だな。ゆっくり休むんだぞ、お休み」
「おやすみなさい、リリ」
「おやすみなさい、お母様、お兄様」
お母様とお兄様が部屋を出てから、侍女がパンがゆを持ってきてくれたので平らげ、熱があったばかりなので湯あみではなく体を拭ってもらい、新しい夜着に着替えてまたベッドに入る。
「では、お休みなさいませ、お嬢様」
「ええ、いつもありがとう、アン」
私の専属侍女アンは微笑んで部屋を出た。
やっと、一人きりになれた私は早速起き上がって思い出したゲーム内容を書き出す。
まずは「第二王子殿下」から。
確か、エディアルド・セス・アルステア様で、婚約者はミリアネア・ライラック公爵令嬢。ミリアネア様はイエローゴールドの明るい金髪に対し、エディアルド様は濃いめの日に透かした蜂蜜のような金に、王家の瞳である濃いグリーン。
王族である傲慢さと、王太子である兄に対するコンプレックスをこじらせた、お約束通りの方。
続いて公爵家、ルシアン・アーバンライル公爵令息。財務大臣を務めるアーバンライル公爵の長男で跡取り、アリアンローズ・マリーナ侯爵令嬢の婚約者。青い髪に青い目の可もなく不可もない、所謂高位貴族らしい令息で、高位貴族の割には使用人や下位貴族に優しいと言うくらいしかない普通の令息。
侯爵家の方は確かお名前はロバート・ダウンウィル侯爵令息。緑の髪に金の瞳、真面目で堅物、学年主席を取るくらいにお勉強はできるが情緒とコミュニケーション能力はちょっと残念な方。ティティリエ・セルージュ伯爵令嬢の婚約者だ。
伯爵家の方は2人で、お1人は騎士団長のご子息である、赤い短髪に茶色の目をしたいかにも脳筋そうな見た目をしている。そういえば護衛も兼ねる第二王子の側近のはずなのだけど、ランチ襲撃メンバーには居なかったけど大丈夫なのだろうか?
まあいいか、名前はゼス・ファイルズ伯爵令息。剣の腕は既にある程度認められていて、たまに騎士団の訓練に加わっているとか、ただまあ脳筋なので社交やマナーのサポートを期待されてフランルージュ・ファールス伯爵令嬢と婚約している。
最後はまだ入学されていない、1つ年下の伯爵令息で突然変異とも先祖返りとも言われているとても潜在魔力が多いことから魔術塔で幼い頃より魔力制御の訓練をされているアラン・ケイトン伯爵令息。魔術馬鹿なケイトン令息は、新しい魔術を研究開発しているファナ様のお父様であるメディル子爵に会いに行っている時に意気投合し、ご婚約された。
ふう、やっと全部書き出せたけど、テンプレですね。知ってたけど。
良くも悪くも誰も不幸せになる描写がなく、ハーレムもないから安心して遊べるいいゲームだったのです。本当にライバル令嬢の安全も、
しかし、私はもうライバル令嬢全員と攻略対象2人と会ってしまっているのね。ついでに第二王子なんかヤバイこと言ってなかった?
あのお美しい令嬢方が私を虐めているという噂・・・ え、半分以上は今日お会いしたばかりなのに?こんな展開ゲームにあった記憶がないのだけど?
不安と混乱で硬直していると遠慮気味な小さめのノックの後侍女のアンが入って来た。あ、ヤバい・・・。
「まあ、お嬢様!まだ起きていらっしゃったんですか!」
「ちょっと気になる事があったから、もう終わった所よ?」
「もう、病み上がりなんですから・・・ ご無理されないでくださいね?
それに明日はブランシュ様がいらっしゃいますよ」
「そうだったわ!ありがとうアン、もう大人しく寝るわ」
「そうなさって下さいませ」
私をベッドへ連れ、布団をかけてくれるとライトを消してくれる。
「お休みなさいませ、リリアナお嬢様」
「おやすみなさい、アン」
そう、明日は兄の婚約者であるブランシュ様が来て下さるなら、お話ししたいことが山のようにあるのだ。
翌日を楽しみに目を閉じると、やはり体調が戻り切っていなかったのがすぐに寝落ちてしまった。
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