第12話 まさかの再会

 しばらく俺は茂みに息を潜めていた。

 ギルドに戻った素振りを見せ、またこの場所にひょいと戻る可能性もあるからだ。

 

 でも恐ろしかった。

 終始ずっと肉を喰らう肉食獣のようにギロッとした目で俺を見つめていた。

 彼女が何を求めているのか到底理解できないが、あのような目で見られたのは長年生きてきて初めての経験だ。


 俺もそろそろギルドに戻って採取した素材を換金したいところだが、彼女が待ち構えている可能性もある。

 今日のところは一旦、家に帰るとしよう。


 ダンジョンを出ると外はすでに夜になっていた。

 繁華街にはキラキラとした明かりが灯り、昼間以上の人と車が行き交う都会ならではといった光景が広がっていた。


 帰りにスーパーでも寄って晩飯を買おう。


 幸い異世界転移前に貯めていた貯蓄がまだ残っていたのだ。

 だから一ヶ月の食費はなんの心配もいらない。


「今日は色々忙しかったし、美味い惣菜と酒でも買って――」

「あ、おじさんじゃん!」


 この透き通る可愛らしい声は……。


 俺は恐る恐る後ろを振り返る。

 やはり想像していた通りそこにいたのは、名前も知らない例の彼女本人だったのだ。しかしいい匂いがする。若い女性だけあって身だしなみには気をつけているのだろう。


 俺なんてダンジョンから出たばかりだから汗臭くてどうにかなりそうだ。

 ついでに加齢臭も年々キツくなっています。


「お、おお君は確か……あの時の」

「そんな他人行儀にならないでよ、おじさん」


 いやいや他人ですけど!


 そう言い返したいのも山々だが、ここは敢えて言わないで置こう。

 今の時代パワハラやセクハラ以外にも色々と厳しい時代。だからこそ発言には俺も気をつけないと。

 訴えられたら間違いなくこの先の人生は詰みだ。


「自己紹介がまだだったよね?」

「確かに聞いてなかった」


 いや、もういい歳したおっさんの俺が言うのもなんだけど本当に早く解放して欲しい。自己紹介とかいいから早く帰って飯食って酒飲んでさっさと寝たい。

 また明日もダンジョンに潜る予定だから英気を養って置かないといけないからだ。


―――――

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