勇者の俺を使い潰すつもりだった裏切り者達を土壇場で見限ってみた

サドガワイツキ

第1話 最終決戦?いいやNTR暴露ざまぁ大会だよ!


 ここは魔族領最奥にある魔王城、王の間。

 豪奢な装飾の施されていた城内も、今は激しい戦闘の余波で半壊していて見る影もなく壁や天井には外が見える大穴が空いている。


「……ハァ、ハァ、私たちの勝ちね!終わりよ、魔王!!」


 油断なく剣を構えながら声をあげているのは姫騎士ヒルデ。金の髪を後頭部で纏め、白銀の鎧に身を包んでいる美少女剣士でその剣技は俺達の祖国ネトリック王国随一と謳われている。


「女神よ、加護に感謝いたします。王国の勝利ですね」


 修道服に身を包み祈りを捧げているのはパーティの回復役聖女セシリア。パーティ一の巨乳を持つが、その豊満な胸の前で掌を組んで天に祈りを捧げているのはこちらの勝利が確定したからだろう。


「そんな事よりムラムラしてきたから商業都市にワープして娼館で3Pしたいンだわ~けど金ねンだわ。んほぉ~っサキュバスとマーメイドとの異種プレイたまんねぇ~!あぁ思い出したらちんちんがイライラしてきたぜぇ~」


 遊び人のトールは性欲を持て余しているのかムラムラしている。まぁ、トールはいつも通りだ。


「―――さぁ、油断なく躊躇いなくとどめを刺すのよエリオット!!」


 俺の幼馴染であり恋人でもある魔導士マルールが俺にトドメを刺すように促してきた。

 このパーティの中では俺と同じ山間の村の出身で、魔法の才能を見出されて女神さまから祝福を授かり勇者パーティーの魔法担当として抜擢されたのだ。

 幼い頃に互いの両親を流行り病で喪ってから、肩を寄せ合って懸命に生きて来た最愛の恋人である。子供のころから勝ち気なところは変わらないが、この旅に出てから女性らしい柔らかさを身にまとうようになったと思う。


 マルールから視線をうつした先には、人の倍近い身長に筋骨隆々とした身体を持つ魔族の王がいた。額の中央から一本の角が突き出ており、薄紫色の皮膚の色が魔族であることを表している。そんな魔王は満身創痍で立っているのがやっとという様子で、反撃をするだけの力がもうないのか、眼差しでトドメをさせと促してきている。

 あるいは死力を尽くして戦ったうえでの決着だから、俺に討たれることを受け入れているのかもしれないが。


「この魔王、敗れて命を惜しもうとは思わぬ。さぁ、我を討つが良い“勇者”よ!!」


 勝敗は完全に決着したのは間違いない……だから俺は剣を降ろす。

 此処まで本当に長い旅立った。心を殺して、本心を隠しての旅は辛かった。だから思わず笑みも零れるというもの。……復讐を成せるという喜悦の笑みが。


「あぁ、決着はついたな――――だから俺は此処で戦いを降りる」


 予想だにしていなかったその言葉に、“ただ一人”を除いて勇者パーティーのメンバーも、魔王も驚いて目を剥いていた。


「な……何を仰るのですか勇者様?!なぜそのような事を?!魔王のダメージ無効能力を貫通してダメージを与えることができるのは勇者様なのだけですよ?!」


 最初に異を唱えたのは聖女のセシリアだった。

 セシリアが俺の近くに駆け寄ってきて必死にトドメを刺すように促すが、セシリアの言うとおり、魔王を倒し切る事は俺にしかできない。

 そんな事はわかっている、だから戦いを辞めるという事がまだ理解できないようなので、面倒だが一から説明をしてやるかと俺はセシリアに剣を向け酷薄な笑みを浮かべる。


「何故、だと?逆に言うが当然だろうが。俺に隠れてあの王子とヤリまくって魔王を倒して用済みになったら俺を陥れる段取りをしていた女達がどの口そろえて俺に魔王を殺せというんだ」


 俺の言葉に、セシリアが顔色を変えた。――――ヒルデも、そして幼馴染で恋人であるマルールも揃って顔色を変えているのも見逃さない。


「何を言うのよエリオット?!急にそんなありもしないでたらめを言わないでよね!!私が好きなのはいつだってアンタだけなんだからっ!!」


 マルールが真っ先に反論するが、10年来の幼馴染で婚約者の身ともあればまぁ、そうなるな。好きなのはいつだってアンタだけか、いい台詞だ感動的だな……だが無意味だな。


「―――ほーん??ほーん??それじゃ、ポチッとな♪」


 マルールの言葉に対して、気配を消して俺のすぐそばに移動してきていたトールがニヤニヤしながら懐から水晶を取り出し、言葉と共に起動した。


『あぁん、いいですぅ王子ィ♡気持ちいいですぅぅぅ』


『いいぞぉ、マルール!随分良い動きをするようになった、“初めて”のころからは大違いだ!!勇者が魔王を倒した暁には貴族に取り立てて側室にしてやるぞぉ!』


『はぁぁぁんっ、嬉しい♡あんな田舎者のエリオットなんか棄てて王子に抱かれて良かったですぅぅぅぅぅ』


『そうだろうそうだろう!そのためにも魔王を倒し終わったら勇者を始末するんだぞ!!俺の栄光ある治世に俺より目立つやつはいらないからな!!』


 空間にでかでかと投影されたのは、俺達勇者パーティーを派遣したネトリック王国の王子の上で腰を振るマルールの姿だった。


「嫌ぁあああああああああああああああああああああああっ?!」


 自らの痴態に羞恥と困惑から絶叫を上げるマルール。

 ドワーフの工廠にトールが依頼して制作してもらった映像記録を保存する魔法道具だが、効果は抜群だ!

 突然の展開に魔王も思わず固唾をのんで見守っているけれど、すまない。突然の内輪もめ本当にすまない。だがどうか許してほしい。


「まだまだ行くぜーっ!オラオラオラァッ!!オラオラオラオラオラオラオララオラオラァッ!!くらえビッチどもヒャッハー!!」


 手を休めることなく水晶を続々と取り出して起動していくトール。王子に抱かれて嬌声を上げる聖女……いや、性女セシリアの姿や、罵られ責められて喜ぶヒルデの姿も投影されたのでセシリアもヒルデも驚き、悲鳴を上げる。

 そしてその行為の中で王子は、セシリアにも、ヒルデにも、そしてマルールにも魔王を倒した後に俺を始末することを促しその代わりに3人を貴族に取り立てて愛妾にすることを約束していた。

 取り繕う事も出来ず、投影された痴態と嬌声をかき消すように叫ぶしかない裏切り者たち。


「この瞬間を―――待っていたんだぁ!!その顔が見たかったぁ!裏切りがばれて絶望するそ・の・顔がァ!ワハハハハハ!ヴェアハハハハハハハハハァ!!」


 トールが喜々とした表情で顎を突き出してながら女たちを嘲笑している。活き活きとして本当に元気だがここはトールの好きに任せよう、この復讐劇を企画立案したいいだしっぺこいつだし。


「どの口がどの口がどの口がどの口がぁっ!!!!!!旅の間中はエリオットに色目をつかってたくせに裏では王子と“繋がって”る裏切り者の尻軽女どもがぁ!!」


 ジェスチャーの意図はわからないがトールが両手の中指をたてて3人の女を煽り散らしているが、3人は言い返すどころではなくギャオォォォンギャオォォォンと悲鳴を上げ続けている。

 中指をたてる謎のジェスチャーのようにトールの行動は時々よくわからないときがあるが、それでもトールが考案した水晶に映像を記録する魔法道具は今この場で抜群の効果を発しているのは確かだ。トールのお陰で俺はこいつらの裏切りを知り、こうして“ざまぁ”が出来ているのだから。


 ……そして、こと此処にいたりようやくこの3人の裏切り者たちは自分たちの行為がバレていたことを理解したようだ。

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