第13話 重いコンダラと王国の誕生
白い鳥を肩に乗せながら歩き出したゴーンゾだが、むかっている先に海があるのかわからないから、白い鳥にきいてみた。
「なぁ、海ってこのまままっすぐに行けばたどり着くのか?」
白い鳥は「ピィ…?」と首をかしげていたが、フワッと身体を浮かせると上空高くへ飛び立っていった。しばらく大きな円を描いて上空を飛んでいたが、やがてゴーンゾの肩に戻ってきた。
「ピィ!」と鳴くと、器用に右の翼を前に出して少し右寄りの方向を示した。
「そうか、少し右寄りにまっすぐでいいのか」
ゴーンゾがつぶやくとそのとおりと言いたげに「ピィ!」と白い鳥は鳴いた。
「そうだ!、これから海まで一緒に行くなら名前をつけようか?」
ゴーンゾが白い鳥にきいてみると、「ピィ、ピィ」と何度もうなずいて早くつけろと催促するように軽く頬をつついてきた。
「う〜〜ん、何がいいかな〜〜。ピィピィ鳴くから「ピィ…」と言うと「ピピッ」と鳴いて首を振ってる。
「違うのがいいのか…、白いからハク……、う〜〜ん、ハックならどうかな?」
白い鳥はピィィィ〜〜と鳴いて嬉しそうに翼を小さくバタバタさせて、ゴーンゾの頬を軽くつついた。
「よーし、じゃお前の名前は「ハック」だな。よろしくなハック」
ゴーンゾがそう言うと、ハックとのあいだになにか繋がった感覚があった。
ゴーンゾは不思議な感じがしたけど、心地よいその繋がりに満足した。
ゴーンゾの向かう先にはケモノが住む森が広がっている。歩いていくには森をなんとかしたいと思い、ちょっと威力の強い魔法を放って道をつくりながら進んでいこうと決めた。
「道をつくる…舗装…ロードローラーで道を固めるのがいいかも…。でも森の樹が邪魔だなぁ……一気に燃やしちゃうか」
ゴーンゾは大きな火の塊でまっすぐ森を切り開いていくイメージで両手を前に突き出して「燃やし尽くせーー」と言いながら魔力を放った。
5メートルぐらいの巨大な火の玉が森に向かって放たれた。
ズゴォォォーンという大きな音とともに樹が弾き飛ばされて、30メートルくらいの幅ではるかかなたまで森が切り開かれて土がむき出しになった道ができたが、残された樹の根や石がゴロゴロ転がっていて歩きにくいので、土をガッチリ固めたローラーを作ってゴロゴロ転がして歩きやすいように道を固めながらローラーの後ろをノンビリ歩いていった。
重んもぉいぃ♪
コンダァラァ♪
試練のみーちぃぉぉ〜〜♪
行くがー♪
おとぉこぉの〜フンフフン♪
フフフフフン♪
昔々流行った野球アニメのテーマソングを口づさみながら、ゴーンゾはごきげんだ。
ちなみに「重いコンダラ」ではなく「思い込んだら」なのだが、まぁ気にしたら負けなので……。
ーーーーーーーーーー
ゴーンゾの旅立ちを見送ってから森に入ってケモノを狩っていたミリバたちは、遠くから聞こえてきた「ズゴォォォーン」という大きな音と振動にギョッとして近くにいた集落時代からの顔なじみのおっちゃんたちと顔を見合わせたが、たぶんゴーンゾがなにか大きな魔法を使ったんだろうと納得した。
「アイツ、街にいたときには遠慮して我慢してたんだなw。遠慮無しで魔法を使えて楽しんでるようだな」
ミリバたちが狩りを終えて街に帰り、ゴーンゾが旅立った方向を見ると、森を切り開いて地平線まで続く道ができている。まったくアイツはとんでもないヤツだなと笑ったが、森を切り開いた道をうまく使えばケモノを狩るのにも、街を大きくするのにも使えるなとニヤリと笑いあった。
それからはゴーンゾが切り開いた森の中の道を使ってケモノを狩ったり、薬草や食べられる草や果物を集めるようになった。
たまには道を通ってミリバたちの街に来る者もいた。道を作りながら進んでいくゴーンゾに出会ってこの街の話を聞き、行ってみたらどうだと言われたそうだ。
ゴーンゾの道を通って街に来る者たちを受け入れながら、ミリバたちの街はさらに大きくなっていった。
やがてミリバに王になってもらい、王国になろうと言い出すものがあらわれた。異論のある者はいなかったので、ミリバを王にして、王国を名乗ることになった。
ミリバは嫌がったが集落時代からの顔なじみのおっちゃんたちや街のみんなが頼み込んできたので断りきれずしかたなく名称は『ミリバ王国』としたが、ひとつだけ約束してもらった。
ミリバは街に住むの者たちを集めて言った。
「この街に住むみんなの願いで、私が王となり『ミリバ王国』を名乗ることになった。決まったことなので全力でこの街を大きくして、みんなが安心して暮らせるように頑張っていくが、貧しい集落から大きな街になれたのは、ゴーンゾがいてくれたからだ、だから王になるのはゴーンゾがふさわしいと私は思っているんだ。いつの日にかゴーンゾが旅から戻ってきたときには、王を替わってもらう。これは王として最初の命令だ。みんなも忘れないでいてほしい」
初代王となったミリバは街の名前を『ロソドリ』とした。ガーシェ大帝国からこの地に一緒にミリバと流れてくる途中で亡くなった妻の名前だった。
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そんなことになっているとは知らないゴーンゾは魔法を思いっきりぶっ放してはローラーで道を作って行くのを楽しんでいた。
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