第7話 暖かいもの

 ん…、んんーん。


 カオルが意識を取り戻した。


 なにかヌルヌルとした温かい粘液につつまれた身体。眼をあけようとしてもできない。手足も動かない。


 ここ…どこ……。


 また意識を失った。



 頭の上のほうで暖かいものがひろがった気がして意識が戻った。


 なんだろう…。


 暖かいものが消えるとまた意識を失った。


 何度もどこか身体の遠くで暖かいものがひろがるのを感じたが、眼もあかず手足も動かないままで時間がどれだけ過ぎたのかもわからなかった。


 やがて手足が少しずつ動かせるようになったが、眼はあかないまま、なんとなく暖かいものが優しい光のように感じてきた。


 暖かいものがひろがると、心臓や喉のあたりがぽわーんとしてきて、楽しくなって手足をグイグイ動かせるようになってきた。


 どこかとおくから、雷鳴のようにゴロゴロする音が響いてくるのも感じれるようになり、それは高い音と低い音が何度か繰り返されていた。


 ーーーーーーーーーー


 サウスエンド辺境伯領にある魔物の森に接したサロガ村の守備隊長兼代官のルーキ・デカ(騎士爵)・サロガは、妻のミリアが身ごもってから、大きくなっていく妻のお腹に話しかけるのが日課になっていた。


 ミリアも夫との会話を楽しんでいて、ときおりその会話を聴いているように動くお腹の子の成長を喜んでいた。


 生活魔法と回復魔法が使えるミリアは、魔法を使うたびにお腹の子が動きまわるのを不思議に思っていたが、何ごともなく無事に生まれてきてくれることを【創造神:サリーエス様】に祈っていた。


 やがて臨月を迎え、サロガ家に女の子が生まれた。


 ルーキは、その子を「ミズキ」と名付けた。


 ーーーーーーーーーー


 温かい粘液に包まれていたのに、いきなり強く狭い場所に押しつけられてギュウギュウひっぱられ、あまりの痛さに我慢ができずに「ギャァァァ〜〜〜。」と声を出した。


 カオルは「ミズキ・デカ・サロガ」として魔法のある異世界に産まれ落ちた。




△ △ △ △ △


 なんとか主人公の転生にたどり着きましたw。


 転生前のアイドル/オタクの話がダラダラと続いてしまいましたが、これからもとりとめもなく書いていきますので、なにとぞ生暖かい目で見ながら読んでいただければ幸いです。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る