第6話 アイドル活動の終わり

 ★文中に登場する企業名・グループ名・個人名はフィクション(想像の産物)ですので、実在するものではありません。


 もしかして……コレは……、と思われる部分があっても、フィクションですので、実在するものではありません(大事なことは繰り返すのがお約束w。)

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 三年目に入った「チョコメロン」は、大阪市内に点在する集客数百人〜二百人程度のライブハウスを主なライブ拠点として週末に活動していたが、それとは別に関西ローカルのCMや関西ローカルテレビ局が制作するドラマのオーディションにも参加していた。メンバー全員が採用されて通行人やレストランの客役でチラッと映る程度だが、なんとなく芸能界のはじっこに加えてもらえた気がした。


 メンバーの中で常にいいポジションで採用されていたのは、イメージカラーがレッドでライブではセンターポジションの「ミータン」だった。女優の綾○はるかさんによく似たシュッとした顔立ちでスラリと伸びた手足がカメラばえしていた。のほほーんとしたええとこのお嬢さんで、ちょっと天然ボケで、ヲタクさんたちからも人気が高かった。



 アイドル活動にもテコ入れをすることになり、メジャーレーベルからCDを出すことが決定した、それに合わせてマネージャーさんが企画・撮影監督をしたMV(ミュージックビデオ)も制作した。事務所に所属している同じ年頃の男の子を相手にした学園風のシチュエーションのものと、河原や海岸で撮ったものを公開した。


 単独ライブも開催して、心斎橋にあるライブハウスは二百人以上のお客さんでパンパンになり、ライブ時間も二時間超えで、物販も三時間近くやって、メンバーもスタッフさんたちもヘトヘトだったけどとても楽しかった。


 毎年夏に東京のお台場で開催される大型アイドルフェスにも参加できて、カンカン照りのビルの屋上ステージや大きなロボットのそばの階段ステージで汗まみれでライブをしたのも夏休みのいい思い出になった。


 活動四年目に入り、中学生活にも慣れた頃に、メンバーのカエカエがグループを辞めた。

 高校・大学一貫校の受験に備えるために、事務所も辞めてしまった。


 カエカエの卒業ライブのあと、残された五人でアイドル活動を続けたが、いつまでやるんやろう…?という気持ちはカオルの心に残った。


 中学二年になり、高校受験に向けて自分たちも頑張らないと!と思うメンバーが増え、それぞれの親と事務所との話し合いで、メンバー全員の卒業が決まった。レーベルとの契約があるので、グループ名は事務所の若い娘たちが引き継いで活動していくことも決まった。


 卒業ライブのあとは、芸能活動もお休みして、ひたすら受験勉強を頑張って、なんとか公立高校に入学できたけれど、その頃にはステージに立ちたいとかカメラの前で演技したいとかいう気持ちは薄れていた。


 そんなときに、母親からミータンの話を聞いた。中学卒業に合わせて東京に行き、メジャーアイドルグループが新規に立ち上げるグループのオーディションに合格したという。ワイドショーの芸能コーナで取り上げられていた記者会見では、センターで微笑むミータンがいた。


 ミータン…ホンマにアイドルさん好きなんやなぁ…、頑張ったんやなぁ。


 応援したい気持ちと自分だったらどうしただろうかと思う気持ちがぐちゃぐちゃになって、眠れない日々が続いた。


 なんとなく足を向けた心斎橋のライブハウスで自分と同じ年頃のアイドルグループのライブを見て、やっぱりアイドル活動を続けようかどうしようか思い悩みながら御堂筋沿いをぶらぶら歩いていると、〈ガシャーン〉という音とともに、いきなり背中に激しい衝撃と痛みを受けて歩道に倒れた。


 車道の左端を爆走していた自転車とトラックが接触して、はじき飛ばされた自転車がぶつかってきたのだ。


 ゆがんだ前輪のフレームが背中に突き刺さり、カオルは出血多量で意識を失った。


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