第28話 犯人との対峙
香織と涼介は、高橋信也の行方を追うためにさらに調査を進めた結果、彼が最近頻繁に出入りしていたという情報を得た。情報を元に二人は、門司港の古い倉庫へと向かった。港に近いその倉庫は、かつては賑わっていたが、今ではひっそりと静まり返っていた。
「ここがその場所だ。」涼介が静かに言った。
「高橋信也がここにいる可能性が高いわね。慎重に行動しましょう。」香織は周囲を見渡しながら答えた。
二人は倉庫の入口にたどり着き、鍵が掛かっていないことを確認した。静かに扉を開け、中に入ると、暗闇の中でかすかな物音が聞こえた。涼介が懐中電灯を点け、慎重に進んでいく。
「高橋信也、出てきなさい!」香織が声を張り上げた。
すると、倉庫の奥からゆっくりと人影が現れた。黒い服に身を包み、冷たい目つきをした高橋信也が立っていた。
「やっぱり君たちか。よくここまで来たな。」高橋は冷笑を浮かべた。
「あなたの犯罪はここで終わりよ。もう逃げられないわ。」香織が毅然とした声で言った。
「終わりだと?本当にそう思っているのか?」高橋は不敵な笑みを浮かべたまま、手元のスイッチを押した。
瞬間、倉庫内の電気が一斉に点灯し、周囲が明るく照らし出された。高橋の周囲には、さまざまな医療器具や薬剤が並んでいた。彼は一瞬の隙を見て逃げ出そうとした。
「逃がさない!」涼介が叫び、すぐに高橋を追いかけた。
高橋は巧みに物陰に身を潜め、涼介の動きをかわそうとする。しかし、涼介の動きも素早く、すぐに高橋を追いつめた。狭い倉庫内での激しい格闘が始まった。
「香織、気をつけて!」涼介が叫んだ。
香織もまた、高橋の動きを見逃さず、彼の背後に回り込んで足を引っ掛けて倒そうとした。しかし、高橋はバランスを崩すことなく、逆に香織を押し返してきた。激しい格闘が続く中、高橋は再び逃げ出そうとした。
「ここで終わりにする!」香織が叫びながら、高橋に向かって突進した。
涼介はその隙を突いて、高橋の腕を強く締め上げた。高橋は抵抗を試みたが、二人の連携には勝てなかった。ついに、高橋は地面に倒れ込み、息を荒げながら降参の態度を示した。
「これで終わりだ、高橋。」涼介が息を整えながら言った。
香織も同様に深呼吸しながら、高橋の手に手錠をかけた。「もう逃げられないわ。」
高橋は黙ったまま、敗北を認めるように頭を垂れた。狭い倉庫内での戦いは過酷だったが、二人は高橋を捕らえることに成功した。
「さあ、真実を話してもらうわよ。」香織が犯人に向かって冷静に言った。
その瞬間、高橋は突然笑い出した。「君たちは本当に愚かだ。真実はそんなに単純じゃない。」
「どういう意味だ?」涼介が問い詰めた。
「全てのピースが揃っていない。まだ見つけていないものがある。君たちは本当の計画を知らない。」高橋は不敵な笑みを浮かべ続けた。
「どういうこと?」香織がさらに問い詰めたが、高橋はそれ以上何も言わなかった。
二人は高橋を警察に引き渡す準備を進めながら、彼の言葉の意味を考え続けた。事件は解決に向かいつつあったが、まだ謎が残されていることを感じていた。
「彼が言ったこと、本当に気になるわ。」香織が呟いた。
「ええ。もう一度、全ての手がかりを洗い直してみましょう。必ず真実にたどり着くはずです。」涼介が答えた。
こうして、香織と涼介は新たな手がかりを探し、事件の真相に迫るための捜査を続ける決意を新たにした。門司港の静かな夜に、再び動き出した二人の捜査が新たな段階に入った。
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