第27話 高橋信也の影

翌朝、香織と涼介は門司港の探偵事務所で昨晩得た情報を基に捜査計画を立てていた。探偵事務所は古いレンガ造りの建物で、周囲のレトロな雰囲気と調和していた。


「高橋信也がこの事件に関与している可能性が高いわね。」香織は高橋の名刺を見ながら言った。


「彼が持っていた薬剤が筋弛緩剤であることが確認された今、彼の行動を追跡することが最優先だ。」涼介が応じた。


香織は高橋の名刺をじっと見つめ、その手がかりをどう活かすかを考えた。「まず、彼の経歴を徹底的に調べましょう。医療関係者である彼がどこで働いていたのか、誰と接触していたのかを洗い出す必要がある。」


「その通りだ。早速、彼の勤務先や知り合いに関する情報を集めよう。」涼介は手早くパソコンを開き、調査を始めた。


数時間後、二人は高橋の過去の勤務先と接触していた人物のリストを手に入れることができた。その中には、彼が以前勤務していた病院の名前が含まれていた。


「ここに注目してみて。この病院で彼が何をしていたのか、詳細を調べる価値があるわ。」香織が指差した。


「確かに。この病院で何か手がかりが見つかるかもしれない。」涼介はリストを見ながら頷いた。


二人はすぐにその病院に向かうことに決めた。病院は門司港から少し離れた場所にあり、歴史のある建物だった。到着すると、受付で名乗り、管理者に面会を求めた。


「こんにちは、三田村香織と藤田涼介です。高橋信也に関する情報を伺いたいのですが。」香織が丁寧に言った。


「お待ちしていました。こちらへどうぞ。」管理者は二人を会議室に案内し、過去の記録を手渡した。


「高橋信也は数年前までここで働いていました。彼は非常に優秀な医師でしたが、突然退職しました。その理由については詳しく知らされていません。」管理者が説明した。


「彼がここで何をしていたのか、具体的な業務内容を教えていただけますか?」涼介が尋ねた。


「彼は外科医として多くの手術を行っていました。また、特定の薬剤の管理も担当していました。」管理者が答えた。


「その薬剤の管理に関して、何か不審な点はありませんでしたか?」香織が続けた。


「実は、彼が退職する直前に、一部の薬剤が紛失するという事件がありました。調査しましたが、結局解決しませんでした。」管理者が少し不安そうに言った。


「その薬剤が筋弛緩剤であった可能性はありますか?」涼介が鋭く質問した。


「ええ、その可能性は十分にあります。当時、詳細な記録が残されていますので、確認してみてください。」管理者は資料を差し出した。


香織と涼介は資料を受け取り、細かく調査を始めた。その中には、紛失した薬剤のリストが含まれており、筋弛緩剤の名前もあった。


「これで確信が持てたわ。高橋信也がこの事件に関与している。」香織が言った。


「彼がどこにいるのか、さらに追跡する必要がある。」涼介も同意した。


二人は病院を後にし、探偵事務所に戻って次の手を考えた。高橋信也の行方を突き止めるために、彼の知り合いや関係者に話を聞く計画を立てた。


「まずは、彼が最近接触した人物を洗い出しましょう。彼の動きを見つけるためには、周囲の情報が重要です。」香織が言った。


「そうだな。ここからが正念場だ。」涼介が力強く答えた。


こうして、香織と涼介は高橋信也の影を追い、連続殺人事件の真相に迫るための新たな段階に突入した。門司港の静かな街並みを背に、二人はさらなる手がかりを求めて動き出した。

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