第26話 門司港のレストラン「赤煉瓦」
門司港の夕暮れ時、街の灯りが次第に輝きを増し、レトロな街並みが幻想的な雰囲気を醸し出していた。香織と涼介は、手がかりを求めてレストラン「赤煉瓦」を訪れた。このレストランは、門司港で評判の高い名物「焼きカレー」で有名な場所だった。
「香織、ここは本当に美味しいんだ。特に焼きカレーは絶品だって評判だよ。」涼介は目を輝かせながら言った。
「食事をしながら情報収集もできるなんて、一石二鳥ね。」香織は微笑んだ。
レストランの店内は、暖かみのある木の内装で、歴史を感じさせる雰囲気が漂っていた。二人は窓際の席に案内され、メニューを開いた。まもなく、店のオーナーが挨拶に現れた。
「いらっしゃいませ。三田村さんと藤田さんですね。お話ししたいことがあるとお聞きしました。」オーナーは穏やかな笑顔を浮かべながら言った。
「ええ、以前お話しいただいたお客さんのことについて、もう少し詳しく教えていただきたいのです。」香織が言った。
「もちろんです。その前に、ぜひ当店の名物、焼きカレーをお召し上がりください。」オーナーはにこやかに言い、厨房に向かって指示を出した。
しばらくして、香ばしい香りと共に焼きカレーが運ばれてきた。焼きたてのチーズがとろけ、カレーのスパイスが食欲をそそる一品だった。
「これは…本当に美味しそうだわ。」香織は目を見張った。
「いただきます!」涼介は早速一口食べ、その味に感動した表情を浮かべた。「これは絶品だ!」
香織も一口食べ、同様にその美味しさに感動した。「確かに評判通りね。」
食事を楽しみながら、二人はオーナーに詳しい話を聞いた。
「その高橋信也というお客さんですが、いつも一人で来店していました。医療関係者であることは分かっていましたが、彼が持ち込んだ薬剤がとても怪しかったんです。」オーナーは思い出すように話し始めた。
「怪しい薬剤…それについて詳しく教えてください。」香織が促した。
「彼は、いつも何かを隠しているように見えました。特に、その薬剤は普通の医療用とは違う雰囲気を持っていました。ある日、彼がうっかりその薬剤を落とした時、私は見てしまったのです。それが今回の事件で使われた筋弛緩剤に似ているように思えたのです。」オーナーが真剣な表情で続けた。
「なるほど、それは重要な手がかりです。彼がその薬剤をどこで手に入れたのかを調べる必要がありますね。」香織が言った。
「ええ、彼がどこに行くか、何をするかを注意深く観察していました。彼が最後に来たのは数週間前です。それ以降、姿を見かけていません。」オーナーが答えた。
「その情報、非常に助かります。もう一度確認しますが、彼は確かに高橋信也という名前でしたか?」涼介が念を押した。
「はい、間違いありません。彼の名刺もまだ残っています。」オーナーは名刺を差し出した。
「ありがとうございます。この名刺が手がかりになるかもしれません。」香織が受け取り、感謝の意を示した。
こうして、香織と涼介は重要な手がかりを得ることができた。焼きカレーの美味しさに感動しながらも、二人の心には新たな決意が芽生えていた。門司港の静かな夜に、再び動き出した捜査の歯車が次第に加速していくのを感じながら、二人は次の行動に向けて準備を始めた。
「香織、次は高橋信也の足取りを追う必要があるわね。」涼介が言った。
「ええ、彼が何を企んでいるのか、必ず突き止めましょう。」香織は強い決意を込めて答えた。
こうして、香織と涼介は門司港での捜査を続ける中、さらなる手がかりと新たな挑戦に向けて進んでいった。
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