第25話 重要な手がかり

香織と涼介は、警察署で収集した情報を元に、門司港の化学研究所を訪れた。研究所の建物は港から少し離れた静かな場所にあり、周囲は緑に囲まれていた。二人は受付で名乗り、研究員の案内で分析室へと向かった。


「こちらが、筋弛緩剤の分析結果です。」研究員の一人が資料を手渡しながら言った。


「ありがとうございます。この筋弛緩剤はどのようなものなのか、詳しく教えていただけますか?」香織が尋ねた。


「この筋弛緩剤は、通常は医療現場で使用されるもので、特定の筋肉を一時的に麻痺させる効果があります。非常に強力な薬剤で、一般には流通していません。」研究員が説明を続けた。


「医療現場でしか手に入らないとなると、医療関係者が関与している可能性がありますね。」涼介が言った。


「そうですね。この薬剤を合法的に入手するためには、特定の資格や許可が必要です。また、分析結果から、この薬剤には特定の製造ロット番号が刻印されていることが分かりました。この番号を追跡すれば、供給元を特定できるかもしれません。」研究員が続けた。


香織は資料を見ながら考え込んだ。「このロット番号を基に、どの病院やクリニックで使用されているかを調べる必要があります。これが犯人への手がかりになるかもしれない。」


「早速、警察と連携して調査を進めましょう。」涼介が力強く答えた。


研究所を後にした二人は、門司港警察署に戻り、捜査本部で警察官たちと情報を共有した。指揮官は即座に行動を起こし、関係する医療施設への聞き込みを開始した。


「このロット番号に関連する施設をリストアップしました。ここからは我々が各施設に聞き込みを行います。」指揮官が言った。


「ありがとうございます。私たちも引き続き、他の手がかりを探します。」香織が答えた。


捜査本部の一角で、香織と涼介は次の捜査方針を練っていた。その時、涼介の携帯電話が鳴り響いた。電話の相手は、レストラン「赤煉瓦」のオーナーだった。


「もしもし、藤田です。」


「涼介さん、先日お話しした件ですが、思い出したことがあります。あの粉末、以前に見たことがあるかもしれません。」オーナーが電話口で言った。


「それは本当ですか?詳しくお聞かせください。」涼介が興奮気味に尋ねた。


「ええ。実は、以前うちの店に来ていたお客さんの一人が、医療関係者でありながら非常に怪しい行動をしていました。その時、そのお客さんが持っていた薬剤が、今回の事件に使われたものと似ている気がするんです。」オーナーが説明した。


「そのお客さんの詳細を教えていただけますか?」涼介がメモを取りながら尋ねた。


「名前は高橋信也です。いつも一人で来ていて、何かを隠しているようでした。」オーナーが答えた。


「高橋信也…ありがとう、非常に重要な手がかりです。」涼介は電話を切った後、香織に話を伝えた。


「高橋信也…彼が関与している可能性が高いわね。」香織は真剣な表情で言った。


「彼を追い詰めるための準備を始めましょう。次の一手を考えなければならない。」涼介が決意を固めた。


こうして、香織と涼介は重要な手がかりを得て、高橋信也の行方を追うための捜査を本格的に開始した。連続殺人事件の背後に潜む真実に迫るため、二人は全力を尽くす決意を新たにした。

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