第24話 初期の捜査

翌朝、香織と涼介は門司港警察署に向かい、事件の詳細な情報を収集するために署内に足を踏み入れた。署内は緊張感に包まれ、捜査官たちが忙しく動き回っていた。


「お待ちしていました、三田村さん、藤田さん。」現場指揮官が二人を迎え入れた。


「現場で見つけた微細な粉末について、すぐに分析を依頼しました。法医学者からの報告もお待ちください。」香織が挨拶をしながら言った。


「わかりました。まずは遺体の検視結果をご覧いただきたい。」指揮官は二人を検視室へと案内した。


検視室では、法医学者が遺体の検視を終えたところだった。彼は香織と涼介に向かって説明を始めた。


「遺体の表情筋が異常に緩んでいることが確認されました。この笑顔は意図的に作られたものです。口元には微細な切り傷があり、何か鋭利なもので裂かれた可能性があります。」


「つまり、犯人が遺体の口元を裂いて笑顔を作り出したということですか?」涼介が驚きの表情で尋ねた。


「その通りです。また、遺体から検出された微細な粉末は、特殊な筋弛緩剤の一種であることが判明しました。この薬剤が遺体の表情筋に作用し、異常な笑みを引き起こしたと考えられます。」法医学者が続けた。


香織は検視結果をじっくりと聞きながら、遺体に施された残忍な行為に胸を痛めた。「犯人は非常に計画的で冷酷な手口を使っています。この筋弛緩剤について詳しく調べる必要があります。」


「そうですね。この薬剤の出所を追跡すれば、犯人に近づけるかもしれません。」涼介も同意した。


その後、香織と涼介は警察署の捜査本部に戻り、事件に関する情報を整理し始めた。指揮官がさらに詳しい情報を提供してくれた。


「これまでに発生した連続殺人事件の被害者は、全て同じように口元に笑みを浮かべています。それぞれの被害者に共通点はないものの、全ての現場から同じ粉末が見つかっています。」


「犯人は一貫した手口を持っていますね。まずは、この筋弛緩剤の流通経路を調べることが重要です。」香織が提案した。


「また、被害者たちの生活環境や交友関係を洗い出し、共通点を見つける必要があります。」涼介が続けた。


捜査本部の一角に設けられた調査スペースで、二人は集めた情報を基に捜査の方針を固めた。香織はパソコンを使って筋弛緩剤の情報を調べ、涼介は被害者たちの背景を洗い出すために関係者へのインタビューを計画した。


「この筋弛緩剤は医療用途でしか手に入らないもののようです。関係者に聞き込みをして、薬剤の流通経路を特定しましょう。」香織が言った。


「了解。被害者の家族や友人にも話を聞いて、何か手がかりを見つけ出します。」涼介が応じた。


こうして、香織と涼介は事件の初期捜査を本格的に開始した。門司港の静かな街並みに隠された暗い秘密に迫りながら、二人は連続殺人事件の真相を解明するために全力を尽くすことを決意した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る