第18話
釜山の朝は快晴で、透き通るような青空が広がっていた。香織と涼介は、パク・ジュンホ探偵と共に、事件が発生した宝飾店「東洋宝石」へ向かった。
「東洋宝石は、釜山でも有名な宝飾店です。白珠堂事件と同様に、貴重な宝石が狙われました。」ジュンホ探偵は歩きながら説明した。
店に到着すると、オーナーのミン・ソンフン氏が迎えてくれた。彼の表情には、不安と疲労が見て取れた。
「三田村さん、藤田さん、パクさん、ようこそ。今回の事件で大変お世話になります。」ミン氏は深々と頭を下げた。
「お話を伺いながら、現場を見せていただけますか?」香織が尋ねた。
「もちろんです。こちらへどうぞ。」ミン氏は店内に案内した。
店内は落ち着いた雰囲気で、美しい宝石が並べられていた。被害に遭った展示ケースは、すでに修理されていたが、その場所にはまだ緊張感が残っていた。
「事件が起きたのは深夜でした。防犯カメラの映像をご覧ください。」ミン氏は防犯カメラの映像を再生した。
映像には、黒い服に身を包み、顔をマスクで覆った犯人が映っていた。犯人は巧みに鍵を開け、短時間で宝石を盗み出していた。その動きは非常に速く、計画的であることが見て取れた。
「この犯人の動き、非常にプロフェッショナルですね。」涼介は映像を見ながら感想を述べた。
「ええ。非常に訓練された動きです。この手口を使ったプロの犯行でしょう。」ジュンホ探偵も同意した。
「他に何か不審な点はありませんでしたか?」香織はミン氏に尋ねた。
「実は、事件の前に一度、防犯システムが点検されました。通常ならば年に一度ですが、今回は急に点検が必要だと言われました。」ミン氏は少し不安そうに答えた。
「その点検を行った業者についての情報はありますか?」香織は更に尋ねた。
「はい、こちらに記録があります。」ミン氏は書類を取り出し、点検業者の情報を渡した。
「これを基に調査を進めましょう。犯人がこの点検を利用した可能性が高いです。」ジュンホ探偵は真剣な表情で言った。
その後、香織と涼介は店の従業員たちにも話を聞いた。皆、事件当夜の不審な動きを証言していた。特に、ある従業員は閉店後に見知らぬ人物が店の周りをうろついていたことを証言した。
「その人物の特徴を教えていただけますか?」涼介が尋ねた。
「黒い帽子をかぶっていて、顔は見えませんでしたが、体格は中肉中背でした。」従業員は記憶を辿りながら答えた。
「ありがとうございます。この情報も重要な手がかりです。」香織は感謝の意を述べた。
店内での調査を終えた後、三人は店の外で次の計画を立てた。
「まずは、防犯システムを点検した業者を調べる必要がありますね。そして、犯人が逃走に使った可能性のあるルートも確認しましょう。」香織が提案した。
「そうですね。さらに、防犯カメラの映像を分析し、犯人の特徴や逃走経路を特定しましょう。」涼介も賛成した。
「了解しました。私も警察と連携し、追加の情報を集めます。」ジュンホ探偵が力強く答えた。
こうして、初期の捜査が本格的に始動した。釜山の宝飾店「東洋宝石」での調査は、新たな手がかりを次々と明らかにし、事件の真相に迫るための重要な一歩となった。香織と涼介は、ジュンホ探偵と共に真実を追求するための旅を続ける決意を新たにした。
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