第17話

釜山港に到着した私たちは、異国の風景と活気ある街並みに迎えられた。韓国語の看板や賑やかな市場の音が耳に入ると、これから始まる新たな捜査への緊張感と興奮が入り混じった。


「さあ、ジュンホ探偵に会いに行きましょう。」私は地図を見ながら涼介に言った。


「うん。彼のオフィスはここからそんなに遠くないはずだ。」涼介は地図を指し示しながら頷いた。


釜山の街を歩きながら、私たちは目指す場所へと向かった。街の中心部に位置するビルに入ると、ジュンホ探偵のオフィスがあった。扉には「パク・ジュンホ探偵事務所」と書かれており、私たちは静かにその扉をノックした。


「どうぞ。」中から聞こえる低く落ち着いた声が扉を開ける合図となった。


私たちは中に入り、そこには中年の男性が立っていた。彼の目には鋭い知性が宿っており、温かみのある笑顔が私たちを迎え入れた。


「あなたがパク・ジュンホ探偵ですね。私は三田村香織、そしてこちらは藤田涼介です。」私は自己紹介をした。


「三田村探偵の甥御さんと姪御さんですね。お会いできて光栄です。どうぞおかけください。」ジュンホ探偵は私たちに席を勧めた。


私たちは彼のデスクの前に座り、ジュンホ探偵が事件のファイルを取り出すのを待った。彼のオフィスには多くの書類や地図が並べられ、捜査に対する真摯な姿勢が伺えた。


「まずは事件の概要からお話ししましょう。今回の事件は、白珠堂事件と非常に似ています。犯行手口も、犯人の行動も、非常に計画的でプロフェッショナルです。」ジュンホ探偵はファイルを開きながら話し始めた。


「防犯カメラの映像を確認しましたが、犯人はマスクをして顔を隠していました。」涼介がメモを取りながら言った。


「その通りです。しかし、防犯カメラには犯人が店内に侵入する際に使用した道具や動きが記録されています。これが何かの手がかりになるかもしれません。」ジュンホ探偵は映像の一部を私たちに見せた。


映像には、黒い服に身を包んだ犯人が巧みに鍵を開ける姿が映っていた。その動きは非常に素早く、経験豊富なプロフェッショナルであることを示していた。


「これは…非常に巧妙な手口ですね。鍵を開ける技術が非常に高い。」私は映像を見ながら驚きの声を上げた。


「そうです。この犯人は計画的に行動しており、短時間で犯行を完遂しています。これから現場を詳しく調査し、さらに手がかりを集めましょう。」ジュンホ探偵はファイルを閉じ、私たちに決意を示した。


「ジュンホ探偵、あなたの協力を心から感謝します。一緒にこの事件を解決しましょう。」私は力強く言った。


「もちろんです。私たちはチームです。この事件を解決し、真実を明らかにしましょう。」ジュンホ探偵の言葉に、私たちは再び決意を新たにした。


捜査の初日を終えた私たちは、ジュンホ探偵に誘われて釜山の名物料理を楽しむことになった。釜山の街は夜になると一層賑やかさを増し、様々な屋台やレストランが軒を連ねていた。


「香織さん、涼介さん、釜山に来たからには、ぜひ地元の料理を楽しんでください。ここは私のお気に入りのレストランです。」ジュンホ探偵は笑顔で私たちを案内した。


私たちは、小さな路地に佇む地元のレストランに入った。店内には香ばしい匂いが漂い、温かみのある雰囲気が広がっていた。ジュンホ探偵は手慣れた様子でメニューを注文し、私たちに釜山の名物料理を紹介してくれた。


「まずは、釜山名物の『テジクッパ』です。豚骨スープで煮込んだ豚肉とご飯を一緒に楽しんでください。」ジュンホ探偵が言うと、店員が熱々のテジクッパを運んできた。


私はスープの香りに誘われて一口飲んでみた。濃厚な豚骨スープと柔らかい豚肉が絶妙なバランスで、一気に体が温まった。


「これは美味しいわ…釜山ならではの味ね。」私は感動しながら言った。


「うん、本当に美味しい。」涼介も満足そうに頷いた。


次に運ばれてきたのは、「チュクミポックン」だった。辛いタコの炒め物で、赤いソースが食欲をそそった。


「これは少し辛いですが、釜山の味を堪能できる一品です。」ジュンホ探偵が説明した。


私は一口食べると、ピリッとした辛さが口に広がり、それが心地よい刺激となった。涼介も同様に楽しんでいる様子だった。


「釜山の食事は本当に素晴らしいですね。こうして地元の味を楽しむことができるなんて、嬉しいです。」私は笑顔で言った。


「食事を楽しみながら、明日の捜査についても計画を立てましょう。」ジュンホ探偵が提案した。


食事をしながら、私たちは翌日の捜査計画を詳細に話し合った。美味しい料理と温かい雰囲気が、私たちの緊張を和らげ、さらに強い結束を感じさせた。


こうして、釜山での食事を楽しみながら、私たちの新たな捜査の一歩が踏み出された。真実を追求するために、私たちは力を合わせて進む決意を新たにした。

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