第16話

博多港の朝は清々しい風が吹き抜け、海の香りが漂っていた。私と涼介は、大きな荷物を手に船着場へと向かった。私たちの目の前には、釜山行きのフェリーが停泊していた。これからの旅が始まることに、自然と気持ちが引き締まった。


「香織、準備はいいか?」涼介が私に声をかけた。


「ええ、大丈夫よ。」私は微笑みながら答えた。


フェリーに乗り込み、デッキから見える博多の街並みを見つめた。私たちの心には、叔父の手紙に託された信頼と期待が重くのしかかっていた。フェリーがゆっくりと出航すると、波音が穏やかに響き渡った。


「釜山に着いたら、まずは叔父さんの友人であるパク・ジュンホ探偵に会わないとね。」私は前を見据えながら言った。


「そうだな。ジュンホ探偵がどんな情報を持っているのか、それが捜査の鍵になる。」涼介も真剣な表情で答えた。


船内のラウンジに移動し、私たちは事件の詳細について話し合い始めた。叔父の手紙には、釜山の宝飾店「東洋宝石」で発生した強盗事件が白珠堂事件と酷似していることが記されていた。


「防犯カメラの映像には、犯人がマスクをしていたことがわかっているわ。それに、手口も非常に計画的で、プロフェッショナルな犯行だという点も同じ。」私はメモを見ながら話を続けた。


「そうだな。まずは現場を確認し、従業員たちの証言を集めることが重要だ。」涼介はノートに計画を記しながら頷いた。


「そして、地下道の地図も重要な手がかりになるわね。釜山の地下道に繋がるルートを調べて、逃走経路を特定することが必要。」私はさらに計画を練り上げた。


「うん。犯人の痕跡を見逃さないように、細心の注意を払って調査しよう。」涼介の声には決意が込められていた。


船旅の間、私たちはこれからの捜査計画を詳細に立て続けた。緊張感と期待が入り混じる中、私たちの絆は一層強まっていった。叔父の信頼を裏切らないためにも、全力で真実を追求する決意が固まった。


「涼介、これが私たちの新たな挑戦よ。必ず成功させましょう。」私は涼介に向かって言った。


「もちろんだ、香織。俺たちならできるさ。」涼介は自信に満ちた笑顔で答えた。


フェリーが釜山港に近づくにつれ、私たちの胸には新たな冒険への期待が高まった。韓国の釜山で待ち受ける謎と向き合い、真実を解明するための旅が、今まさに始まろうとしていた。

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