第15話
博多の街がいつも通りの活気を見せる中、探偵事務所の一室に重い空気が漂っていた。私と涼介は、叔父の三田村幸一探偵からの手紙を前にして、互いに顔を見合わせた。
「香織、これは…」涼介がためらいがちに口を開いた。
私は深く息を吸い、手紙の内容を再度確認した。叔父からの手紙には、韓国の釜山で白珠堂事件と酷似した宝飾店強盗事件が発生したこと、そして彼自身が病状のため直接捜査に赴けないことが記されていた。
「釜山での事件か…まさかこんな形で再び白珠堂事件と向き合うことになるとは思わなかったわ。」私は手紙を握りしめながら呟いた。
叔父の筆跡は少し震えていたが、その言葉には強い信念が宿っていた。手紙の最後には、韓国の釜山で協力者が待っているという情報も含まれていた。その協力者、パク・ジュンホ探偵は、叔父の古い友人であり、信頼できる人物だという。
「叔父さんがここまで言うなら、私たちが行くしかないわね。」私は決意を込めて涼介に言った。
涼介も頷きながら言葉を続けた。「そうだな、香織。俺たちなら必ず解決できる。叔父さんの信頼を裏切らないためにも、全力で捜査に当たろう。」
私たちはすぐに準備を整え始めた。釜山への旅の手配や必要な装備、そして現地での連絡手段を確保するために、事務所内は一時的に慌ただしい雰囲気に包まれた。
「涼介、この捜査は私たちにとって大きな挑戦になるわ。でも、必ず真実を見つけ出してみせる。」私は強い意志を込めて言った。
「もちろんだ、香織。俺たちならできるさ。」涼介は私の肩を軽く叩きながら、励ますように微笑んだ。
その夜、私たちは再び手紙を読み返し、叔父の言葉に思いを馳せた。彼の病状が心配だったが、彼が私たちに託した信頼に応えたいという気持ちが強く芽生えていた。
「真実はいつも一歩先にある。」叔父の言葉が心に響いた。
翌朝、私たちは博多港から釜山への船に乗り込んだ。船が出航する際、私は静かに港の景色を見つめ、心の中で誓った。
「叔父さん、必ず成功させます。私たちの手で、真実を明らかにしてみせる。」
涼介も同じ決意を持っていることを感じながら、私たちは新たな冒険の地、釜山へと向かった。波間に揺れる船の中で、私たちの心は確かに一つになっていた。
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