第10話

博多港の地下道に足を踏み入れた私たちは、薄暗い迷路のような通路に囲まれていた。壁には苔が生え、天井からは冷たい水滴が静かに落ちていた。叔父の三田村幸一探偵は、懐中電灯を頼りに地図を見つめ、慎重に道を進んでいった。


「ここは本当に複雑ですね。犯人はこの地下道を利用して逃げたのでしょうか?」私は薄暗い中で慎重に足を運びながら尋ねた。


「その可能性は高いです。地図に示された道を正確にたどることができれば、何か手がかりが見つかるかもしれません。」叔父の声は冷静だった。


地下道はまるで迷路のように入り組んでおり、方向感覚を失いかけるほどだった。私たちは地図を頼りに進みながら、周囲の状況を注意深く観察した。途中、古びた壁画や朽ちた装飾が見られ、この地下道が何世代にもわたり使われてきたことを感じさせた。


「この先に赤いマーキングがあるはずです。」叔父は地図を確認しながら言った。


しばらく進むと、赤いインクでマーキングされた地点に到達した。そこには古びた扉があり、鍵がかかっていた。鍵穴には細工が施されており、簡単に開けられるようになっていた。


「この扉の向こうに何かがあるようです。」叔父は慎重に扉を開けた。


扉の向こうには小さな部屋があり、中には古びた家具や雑多な物が散乱していた。その中でひときわ目を引いたのは、犯人が急いで逃げた際に残していったと思われる痕跡だった。


「見てください、ここに何かあります。」私は指さしながら声を上げた。


床には砂と混ざった泥があり、その中に靴の跡がはっきりと残されていた。叔父はその跡を注意深く観察し、写真を撮った。


「この跡は最近のもののようです。犯人がここを通った証拠です。」叔父はそう言いながら、さらに部屋の中を調べ始めた。


棚の上には、古びた地図や書類が散乱していた。その中には、一冊の古い日記があった。叔父はその日記を手に取り、ページをめくり始めた。


「この日記には、何か手がかりがあるかもしれません。」叔父は静かに言った。


日記を読み進めると、犯人の計画や逃走経路について詳細に記されている部分があった。しかし、決定的な証拠には至らなかった。犯人は非常に用心深く、痕跡を最小限に留めていたようだった。


「ここには重要な情報が残されているが、まだ全ての手がかりを得たわけではない。」叔父はそう言いながら、日記を閉じた。


私たちはさらに進むことに決めた。地下道はますます複雑になり、進むにつれて困難を極めた。しかし、私たちは諦めることなく、地図を頼りに進み続けた。


「犯人はこの地下道を利用して、さらに奥へ逃げているようです。油断は禁物です。」叔父は注意を呼びかけた。


しばらく進むと、地下道の壁に新しい傷がついているのを発見した。それは何か鋭利なもので引っ掻かれた跡であり、方向を示すように連続していた。


「この傷跡は意図的に残されたものですね。犯人が迷わないようにしたのでしょう。」私は推測した。


「その通りです。この傷跡を追ってみましょう。」叔父は慎重に進みながら言った。


地下道の奥深く、私たちは犯人が残したと思われる痕跡をいくつか発見したが、決定的な証拠には至らなかった。それでも、私たちは手がかりを一つずつ繋ぎ合わせ、真相に近づいている感覚を得ていた。


「この道の先に、何か重要なものがあるかもしれません。」叔父の言葉に、私は希望を感じながら、さらに進む決意を固めた。


こうして、博多港の地下道を探索し続ける中で、私たちは犯人の影を追い続けた。地下道の奥に何が待ち受けているのか、その答えを見つけるために。

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