第8話

白珠堂の事件解決に向けて、叔父の三田村幸一探偵は精力的に動き始めた。彼の冷静な眼差しは、店内の隅々までを見逃さなかった。まずは、店の従業員たちから詳細な証言を集めることが必要だった。


私たちは店内に戻り、従業員たちにインタビューを行った。緊張の中で働く彼らに、叔父は優しく語りかけた。


「皆さん、あの夜に何か異常なことに気づいた方はいませんか?」叔父の質問に、従業員たちは一瞬顔を見合わせた後、順番に話し始めた。


「その夜は特に変わったことはなかったと思います。ただ、事件直前に一人のお客さんが急に退店したのを覚えています。」一人の若い店員が言った。


「そのお客さんについて、もう少し詳しく教えていただけますか?」叔父は問いかけた。


「はい、確かに不自然なほど急いで店を出て行ったんです。顔はマスクで隠れていて、服装も全身黒でした。」店員は記憶をたどりながら答えた。


「その人物が犯人である可能性は高いですね。ありがとう、他には何か気づいたことはありませんか?」叔父は慎重に次の質問を続けた。


別の店員が手を挙げた。「実は、事件の前に店の警報システムが一度チェックされたんです。普通はそんなことはないのに、その日だけ点検が入ったんです。」


「その点検を行ったのは誰ですか?」叔父は興味深げに尋ねた。


「外部の業者です。名前は覚えていませんが、確かに見覚えのない人でした。」店員の言葉に、叔父は鋭く反応した。


「その業者についての記録はありますか?」叔父は即座に店長に尋ねた。


「はい、点検記録があります。すぐにお持ちします。」店長はそう言って、記録を取りに行った。


記録を確認すると、その業者の名前と連絡先が記載されていた。叔父はメモを取り、次の調査の手がかりとして慎重に保管した。


店内での調査が終わった後、私たちは周辺の聞き込みを行うために外に出た。白珠堂の周りには、小さな商店やカフェが立ち並び、事件当時も多くの人が行き交っていた。


まず、隣のカフェに立ち寄り、店主に話を聞いた。


「事件当夜、何か変わったことはありませんでしたか?」叔父の質問に、店主は少し考え込んだ。


「確かに、その晩はいつもと違う感じがしました。白珠堂の前に停まっていた黒い車が印象的でした。ナンバーは覚えていませんが、怪しげな雰囲気がありました。」店主は答えた。


「その車はいつまでそこに停まっていましたか?」叔父はさらに尋ねた。


「事件が起きる少し前までです。急にエンジンをかけて走り去りました。」店主の証言は、新たな手がかりを提供してくれた。


次に、近くの商店に向かい、同様の質問を行った。そこで働く人々も、白珠堂の事件について何かしらの情報を持っていた。ある商店の店員は、事件当夜にマスクをした不審な人物が店の周りをうろついていたことを証言した。


「その人物について、何か特徴は覚えていますか?」叔父の問いかけに、店員は少し考え込んだ後答えた。


「黒いジャケットに、黒い帽子をかぶっていました。顔はマスクで隠れていましたが、体格は中肉中背でした。」店員の証言は、犯人像をさらに明確にした。


こうして、店内外から集めた証拠と証言により、犯人の手口が徐々に明らかになってきた。特に、警報システムへの干渉と不審な人物の存在が、事件の鍵を握っていることが分かってきた。


「犯人は非常に巧妙です。しかし、手がかりは揃ってきました。」叔父はそう言って、再び現場を見渡した。


捜査はまだ始まったばかりだったが、私たちは確実に前進していた。真実はいつも一歩先にある。叔父の言葉を胸に、私たちは次の一歩を踏み出す決意を新たにした。

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