第7話

白珠堂の事件の知らせを受けた私たちは、すぐに現場へと向かった。博多の街並みを背景に、歴史ある宝飾店「白珠堂」は静かに佇んでいた。しかし、その中では緊張感が漂っていた。警報が鳴り響いた後、貴重な真珠のネックレスが盗まれたという報告が入ったのだ。


店内に足を踏み入れると、騒然とする従業員たちの姿が目に飛び込んできた。店のオーナーである白井氏は、蒼白な顔をして私たちを迎え入れた。


「三田村探偵、お願いです。なんとかこの事件を解決していただきたい。」白井氏の声は震えていた。


叔父の三田村幸一探偵は、落ち着いた態度で応じた。「お任せください。まずは現場を見せてください。」


私たちは、破壊されたガラスケースの前に立った。ガラスの破片が散乱し、中は空っぽだった。叔父は慎重にその様子を観察し、手を伸ばしてガラスの破片を拾い上げた。


「これは非常に手際が良い。犯人は専門的な技術を持っている可能性が高い。」叔父はそう言いながら、ガラスの破片を元の位置に戻した。


次に、私たちは防犯カメラの映像を確認するためにモニタールームへと向かった。店内の様々な場所に設置されたカメラは、事件の瞬間を捉えていた。


モニターには、不審な動きをする一人の人物が映し出されていた。犯人は黒い服に身を包み、顔はマスクで覆われていた。その動きは非常に速く、計画的であることが伺えた。


「この人物が犯人ですね。顔は見えませんが、その動きは明らかにプロフェッショナルです。」叔父は冷静に分析した。


次に、叔父は初期の証言を集めるために、店の従業員たちにインタビューを行った。従業員たちはまだ動揺していたが、叔父の落ち着いた態度に少しずつ口を開き始めた。


「事件が起きた時、何か不審なことはありませんでしたか?」叔父の質問に、店長が答えた。


「はい、突然警報が鳴り響き、私たちはすぐに展示室に駆けつけました。しかし、犯人の姿は見当たりませんでした。防犯カメラの映像を見る限り、非常に手際が良く、計画的な犯行のように思えます。」


「警報が鳴る前に、何か異常はありませんでしたか?」叔父はさらに尋ねた。


「特に変わったことはありませんでした。ただ、犯人がどのようにして警報を突破したのかが不明です。」


三田村はその言葉に頷き、再び現場を見渡した。「警報システムに何らかの干渉があった可能性がありますね。詳細な調査が必要です。」


捜査は始まったばかりだったが、叔父の冷静な分析と鋭い洞察力が、この難解な事件の解決に向けて一歩ずつ進んでいることを感じさせた。私もまた、その姿に感銘を受けながら、次の手がかりを探すために心を引き締めた。


こうして、白珠堂の事件解決に向けて私たちの捜査が本格的に始動したのだった。

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