第3話

豪華観光列車「オーシャンビューエクスプレス」は、博多駅を出発して美しい海岸線を走り抜けていた。その華やかな旅路の中で突如発生した悲劇に、乗客たちは不安と恐怖を隠せずにいた。私は叔父、三田村幸一探偵の後を追い、彼の一挙手一投足を見逃すまいと心に誓った。


三田村は冷静な目つきで、列車内の各車両を回り始めた。まずはラウンジへと足を運び、乗客たちに一連の出来事について尋ねた。豪華なシャンデリアが揺れる中、彼の落ち着いた声が響いた。


「事件が発生した時刻、皆さんはどこにいらっしゃいましたか?」叔父の質問に、乗客たちは一様に顔を見合わせ、不安そうにしながらも次々と口を開き始めた。


「私はラウンジで友人と話をしていました。突然の騒ぎで驚きましたが、何が起きたのかは分かりません。」一人の女性が震える声で答えた。


「ありがとう。その時、何か不審なことはありませんでしたか?」三田村の穏やかな問いかけに、女性は一瞬考え込んだ後、首を振った。


次に、叔父はダイニングカーへと向かい、乗務員たちに質問を始めた。キッチンでは、乗務員が忙しく料理の準備をしていたが、三田村の存在に気づくと手を止め、彼の質問に答えた。


「事件が発生した時間帯、あなたはどこにいましたか?」叔父の声がキッチンの静寂を破った。


「私はキッチンでカクテルを作っていましたが、松田さんの個室に誰が入ったのかは見ていません。ただ、少し前に高橋さんがキッチンに立ち寄ったのを覚えています。」乗務員の言葉に、三田村の目が一瞬鋭く光った。


次に私たちは、事件の現場である松田の個室へと向かった。豪華な内装が施された個室には、まだ事件の痕跡が残されていた。床には倒れた椅子、そして机の上には未だに冷たく輝くカクテルグラスが置かれていた。


三田村はそのグラスを慎重に手に取り、細かく観察し始めた。「このグラス、何か違和感を感じる。香織、これを検証しよう。」彼の声には、確信と共に僅かな緊張が感じられた。


グラスを調べてみると、カクテルに不自然な沈殿物が見つかった。叔父はその沈殿物を注意深く観察し、それが毒物である可能性を示唆した。「このカクテルに毒が混入されている。これが松田さんの意識を奪った原因だろう。」


さらに、個室内を詳細に調査すると、松田の手元にメモが残されているのを発見した。そのメモには、「高橋との話し合い」という言葉が書かれていた。叔父はそのメモをじっくりと読み込み、高橋信也との関係にさらに疑念を抱く。


次に、三田村は高橋の個室へと向かった。彼は高橋に対してさらに質問を重ねる。「高橋さん、あなたは事件が発生した時間帯にどこにいましたか?」


高橋は冷静を装いながらも、微妙に動揺している様子が見て取れた。「私はキッチンでカクテルを作っていました。しかし、松田さんの個室には入っていません。」


「そうですか。しかし、キッチンでの滞在時間が長すぎるようですね。何か特別な理由があったのでしょうか?」叔父の問いかけに、高橋は言葉を詰まらせた。


証拠が次第に集まり、真実が少しずつ明らかになりつつある中、三田村の鋭い洞察力が光を放ち始めた。「真実は、いつも一歩先にある。」彼の言葉が、私の心に深く響いた。


豪華観光列車「オーシャンビューエクスプレス」の旅路は、謎と緊張感に包まれたまま進んでいく。叔父の冷静な捜査が、やがて全ての真実を明らかにすることを、私は信じて疑わなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る