第40話

 翌朝、リン達はルベリの広場に立っており、そこにはルベリの住民やクラントの住民、そしてアルベルトやアレクシアの姿があった。



「皆さん、この度は本当にありがとうございました。皆さんの活躍でクラントの街その物や住民達もおよそ二十年ぶりにこうして私達と再会する事が出来ました」

「へへ、良いって事よ。俺達はこの世界を巡って全ての消失現象を解決するつもりだしな」

「そうですわね。それにしても、犯人は本当に誰なのでしょうか? 少なくとも強力な力を持った存在なのは間違いないのですが……」

「現時点ではわからんな。そして魔王という可能性もないだろう」

「どうして? もちろん、ルエル様がそんな事をなさるとは思っていないけれど……」



 オーマは静かに答える。



「する意味がないからだ。お前達四天王がいない状態で消失現象を起こしたのならば可能性はあったが、配下であるお前達をわざわざ巻き込み、二十年近くも別の次元に閉じ込める必要はない」

「そうだな! ルエル様がそんな事をなさる可能性は0だろう!」

「……そう、アイツがそんな事をするわけがない」



 オーマがポツリと言い、それに対してアイリーンが首を傾げていると、リンはオーマの肩を強く叩いた。



「へへ、オーマ。お前さんはやっぱ賢い奴だな。ウチの百鬼夜行の頭脳の一人として加わる気はねぇか?」

「少なくとも現時点ではあり得ん。お前を主と認めるにはまだ判断材料も足りず、私にもやるべき事がある。二十年も待たなければならなかった事がな」

「それは何なんですの?」

「今は答えられん。しかし、いずれは話す時が来る。その時を待て」

「わ、わかりましたわ……」



 オーマの静かな圧にアイリーンが気圧されていると、マリアとアーヴィングは不思議そうな顔をし、リンはニッと笑った。



「まあオーマにも色々あんだろうし、おとなしくその時を待つとしようぜ。んで、次はどこに行く? また次の四天王のとこにでも行くか?」

「次か……そういえば、土龍アースドラゴの奴は大丈夫だろうか」

「土龍……土の四天王ですの?」



 マリアは頷きながら答える。



「そうよ。土の四天王、土龍のランドルフ。その異名の通りでランドルフはドラゴンなのよ。それも黒龍」

「黒龍……そういや、ウチにも黒龍の仲間はいるな。母親と子供の二体が」

「私達がまだ七つの頃に百鬼夜行に加わった方々ですね。もしかしたらそのランドルフさんとはお知り合いかもしれませんし、後で聞いてみましょうか」

「そうだな。それで、ランドルフはどこにいるんだ?」

「ランドルフが任されたのはイアリだな。スラン帝国の隣国で、あそこは共和国だったな」

「スラン帝国……」



 アイリーンが表情を暗くする中、リンはその肩を静かに抱いた。



「心配すんな、アイリーン。何かあっても俺が守ってやるよ」

「リン……はい、ありがとうございます」

「どういたしまして。んじゃ、早速出発しようぜ」



 アイリーン達が頷いた後、リン達はアルベルト達に見送られながらゆっくりと歩き始めた。



「アーヴィングさまー! お気をつけてー!」

「……行ってしまったか。まったく不思議な人物達だったな」

「そうですね。ですが、とても良い人達です」

「それはそうだな。さて、クラントが再び旅人達のよく訪れる街になるように色々取り計らうとしよう。アレクシア、お前も手伝ってくれるか?」

「はい!」



 アルベルトとアレクシアは笑いあった後、住民達がそれぞれの生活に戻る中で自分達も行動をし始めた。

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