第17話
「さて、飯食ったら早速城まで出向くか」
朝、少し遅い朝食を食べながらリンは独り言ちる。同じく朝食を食べていたアイリーンが頷くと、椅子に座っていたリンの父親は笑いながらリンを見た。
「まあまだ恋人同士ってわけじゃないみたいだが、両想いではあるようだし、お前からすれば相手の父親への挨拶に行くようなもんだな」
「かっかっか! たしかにそうだが、俺からすればアイリーンの父親はただの気の良い奴で、緊張なんざまったくしねぇぜ? 多少気が立ってる可能性はあるが、俺なりに話をしてくるさ」
「リンの事を王様はだいぶ気に入ってらっしゃるようだしな。リンの強さだってわかってらっしゃるからこそアイリーン様がすぐにリンのところまで行ってもオーマ様達を向かわせなかったんだろうしな」
「その信頼を損ねる気もねぇしな。問題はあまり関わってこなかった兵士共だが……まあ、いざとなれば軽く相手をしてその強さを知らしめてやるさ」
「あなたの相手をする兵士達が可哀想になりますがね。そういえば、あなたは旅に出るそうですが、いつ頃に出発をするのですか?」
リンは咀嚼していた物を飲み込んでから答える。
「そうだな……準備に七日くれぇはかけてぇか」
「だいぶ準備に時間をかけるのですね」
「おうよ。旅ってぇのは何が起きるかわからねぇし、だいたいの行き先を決めた旅と違って、俺みてぇに行き先を決めずってなると尚更準備が必要だ。まあ余計な装備がねぇ方がおれぁ戦いやすいから、愛用してる刀が一振ありゃあ問題ねぇけどな」
「小さい頃から持っているあの刀ですね」
「そうだ。俺にとっちゃあ命と同じくれぇに大事な業物で、大切な相棒だ。だから、これに手をつけようなんて真似をする盗っ人がいようもんなら容赦なく命をとる。命と同等の物に手をつけるからにはそれだけの覚悟を持ってもらわねぇとな」
冷たい笑みを浮かべながら殺気を漂わせていると、両親が苦笑いを浮かべる中でアイリーンはため息をついた。
「あなたがあの刀に対して強い思いがあるのはわかりました。ですが、その殺気を常に漂わせているとただの危険人物としか見られませんよ?」
「危険な男ってぇのも中々乙なもんだぜ? 優しさを持ってたりおとなしかったりする男ってのも悪かねぇが、ただそれだけだと代わり映えがしなくて女から飽きられかねない。だからこそ、たまにやぁけだもの的な一面を持ってる男の方が女からは好まれんだよ。そればかりでも逆に嫌われるがな」
「まああなたはたしかに普段はだらしないように見えてしっかりとしているところはありますし、そのギャップを好む女性は少なからずいるかもしれませんわね」
「アイリーン、おめぇみてぇにな」
アイリーンは軽く赤面する。
「……まあそうですわね。そうでなければ身体を許したりはしませんから」
「へへ、ほんとに最高の夜だったぜ。さて、城に出向くと決めたからにはなんか手土産がほしいな」
「お父様はそういった物にこだわりはありませんが、何になさるおつもりですか?」
「そうだな……」
リンは少し考えた後にニヤリと笑った。
「憎い相手の首、とかどうだ?」
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