第14話

「さて、おめぇら。全員揃ってるな?」



 古ぼけた屋敷の大広間にリンの姿があった。そこには百鬼夜行の面々も姿を見せており、リンは怒りの炎を目に宿しながら冷たい殺気を放っていた。



「あの馬鹿ガキがアイリーンにした事はどうにも我慢ならねぇ。たしかにアイリーンは度々俺のとこに来ていたが、そこに男女の関係は一切なかったし、俺が普段の振る舞いを気を付けてればこんな事にはならなかったと思っている。そこは俺の反省点だ」

「それはどうだろうな、親分。あんたもわかってると思うが、そういう男なら重箱の隅をつついて他の件で同じような事をするだろ。それに、あの嬢ちゃんにとってあんたのとこに来るのは一種のガス抜きみたいになってたはずだ。だから、あんたが振る舞いを変えても嬢ちゃんは来てただろうよ」

「すねこすり達に会いに来てたのもあるだろうしねぇ。あんた達もアイリーンの事は好きなんだろ?」

「うん、もちろん。優しく撫でてくれるし、良い人だと思ってるよ」

「今回の件はアイリーンお姉ちゃんが本当に可哀想だよね。ぬらりひょんのお兄ちゃん、あの嫌な人達はどうするの?」



 子竜の問いにリンは静かに答える。



「国その物を滅ぼす、と言いてぇが、んな事をしても意味がねぇのもわかってる。アイリーンもそれは望んでねぇだろうからな」

「つまり放っておくのか」

「そうだ。俺らが何かしなくともいつかバチは当たるだろうからな。だが、今回の件で調子に乗ってアイリーンやアイリーンの親父さん達に危害を加えようってんなら容赦はしねぇ。そん時はおめぇらにも戦ってもらうからそのつもりでな」



 百鬼夜行の面々が頷いた後、酒呑童子は杯から酒を一口飲んでからリンに視線を向ける。



「あの嬢ちゃんはどうする。やっぱお前が娶るのか?」

「おれぁそうしてぇんだが、アイリーンの意見を聞いてからだな。アイツには色々言ってきたが、意見も聞かずにアイツを無理やり嫁になんざしねぇよ」

「私達との初対面の時には自分のお嫁さんだと冗談めかして言っていましたけどね」

「かっかっか! アイリーンならつっこんでくれると思ったからに過ぎねぇよ。とりあえずおめぇらと話してて俺も頭が冷えたし、まずはアイリーンともっかい話す。ここに来る前におっとさんとおっかさんには任せてきたが、そろそろ戻った方が良いしな」

「わかった。こちらはこちらで色々話しておこう。親分も何かあったらすぐに言ってくれ」

「おうよ。愛してるぜ、俺の百鬼夜行達」



 リンの言葉に百鬼夜行の面々が頷いた後、夜行の書を出現させてリンは姿を消した。そしてそれを見送った後、百鬼夜行達は顔を付き合わせて話し合いを始めた。

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