第41話 迎撃隊発進
第一航空艦隊の「赤城」から三六機、それに「蒼龍」と「飛龍」からそれぞれ二四機。
さらに「瑞鳳」と「祥鳳」からそれぞれ一二機。
第三航空艦隊の「加賀」から三六機、それに「隼鷹」と「飛鷹」からそれぞれ二四機。
さらに「龍驤」と「龍鳳」からそれぞれ一二機。
合わせて二一六機からなる攻撃隊がオアフ島を目指す。
特筆すべきは、そのすべての機体が零戦で固められていることだった。
また、これとは別に「蒼龍」と「飛龍」それに「加賀」から合わせて四機の二式艦偵が発進している。
こちらは零戦の航法支援やあるいは前路警戒にあたることとされていた。
「敵編隊探知! 二〇〇機以上! 方位三三〇度、距離一五〇マイル!」
レーダーオペレーターの落ち着いた、それでいてよく通る声にオアフ島防空の任にあたるスタッフたちが動き出す。
「上空警戒にあたっている機体はすべて迎撃に向かわせろ! 即応待機の部隊はただちに発進! 整備補給中の機体も速やかに即応待機状態に移行、離陸が可能になった機体は順次出撃せよ!」
少し間を置き、空戦指揮官は命令を重ねる。
「上空警戒組は護衛の戦闘機を引き剥がせ! 即応待機組は敵の爆撃機を撃滅せよ!」
オアフ島の空を守る主力は陸軍戦闘機隊だった。
このうち、主力を成すP40については二一六機が配備されていた。
そして、これらのうちの三分の一が上空警戒にあたり、他の三分の一がいつでも出撃できるよう滑走路あるいは駐機場でスタンバイ。
そして残る三分の一が整備や補給にあたるというローテーションを組んでいた。
いかに離発着能力や管制能力それに整備補給能力に優れたオアフ島の飛行場群と言えども、さすがに二〇〇機以上の戦闘機を常時空に上げておくのは無理が有り過ぎた。
空戦指揮官の命令に、上空にあったP40が北北東へとその機首を向けて加速する。
滑走路上にあったP40もまた次々に離陸を開始、上空警戒組の後を追う。
オアフ島にはP40とは別に、P38もまた三六機が配備されていた。
しかし、こちらは新鋭機にありがちな細かい不具合を完全に解消しきれてはおらず、零戦との戦いは避け、もっぱら艦爆や艦攻を狙うよう指示されている。
「上空警戒組は少しばかり厳しいかもしれんな」
空戦指揮官は憂慮のつぶやきを漏らす。
敵は二〇〇機を超える規模でこちらに対して空襲を仕掛けてきた。
おそらく、このうちの半数は零戦で固めているだろう。
一方で、こちらの迎撃第一陣は七二機のP40だ。
数的劣勢は明らかだった。
第二陣となる即応待機組の七二機のP40もまた、場合によっては零戦との戦闘を強いられるかもしれない。
(だが、大丈夫だ。整備補給ローテーの機体も間に合う。爆撃機の始末は彼らに委ねればいい。それにこちらにはP38もある)
実際のところ、整備補給ローテーションの機体については整備も補給もすべて昨夜のうちに済ませていた。
決戦直前に、機体を万全の状態にしておくというのは、当然過ぎるとも言える措置だった。
だから、整備補給ローテーションの機体が置かれた状況もまた、即応待機組とさほど変わらなかった。
(あとは、海軍それに海兵隊の戦闘機隊も迎撃に加わってくれれば万全だったのだがな)
海軍それに海兵隊もまたオアフ島に戦闘機隊を展開させていた。
両軍ともにF4Fをそれぞれ三六機擁している。
ただし、こちらは太平洋艦隊の上空警護がその任務のため、オアフ島を巡る防空戦闘には参加しない。
(それでも、大丈夫だ。敵は二〇〇機余り。一方でこちらはP40とP38を合わせて二五〇機以上で迎え撃つことが出来る)
現実の数字を挙げることで、胸中にわだかまる不安を取り除く。
一連の命令を出し終えた空戦指揮官に出来ることは、ただただ部下たちを信じることだけだった。
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