第33話

 無事不死鳥の炎を回収した俺たちは再び王都に戻ってきていた。


「よくぞ、よくぞ不死鳥の炎を持ち帰った! さぞや大変な経験だっただろう!」


 と国王陛下からお言葉をいただく。まあ、不死鳥と追いかけっこをするのはある意味大変な経験だった……か?


「では、残るはスキリの花だけだな。あれは咲く日がわかっておるゆえ、それまでしばし待つが良い」


 と陛下がおっしゃるが、俺にはまだ懸念点があった。


「お気持ちはありがたいのですが、懸念点が一つ」


「なんだ、申してみよ」


 と陛下に言われたので遠慮なく。


「私の【採取】スキルは現在まだ五倍の効果しかありません。まだ経験が足らぬようです」


 そうなのだ。不死鳥戦の後にスキルを確認してみたところ、【高速採取】の星が増えたのみで、【採取】スキルには成長が見られなかったのである。現在の【採取】の星の数は四。効果にして五倍の効果だ。必要なスキリの花は六輪なので、あと一つ、星が足りないのである。


「そうか……。しかし、上げる方法も具体的にはわからんのであろう?」


 陛下の問いかけに、俺は


「はい……」


 と頷くしかない。


「今回の件ではお主の負担が大きすぎた。書記官に【採取】スキルについて調べさせるが故、少し休んでいるとよい」



 と言われてもなぁ……。逆にどう休んでいいのかもわからない。ソニア様も、


「いつもソウヤ様にはお世話になりっぱなしですので、今度は私たちにお任せください。必ず方法を見つけ出しますので、どうか今は気にせずお休みを」


 と言ってくれてはいるんだけれども。まあとりあえず、


「そうだ、今回の件の礼として、そなたに褒美を授けることにした。リストを後で届けるが故、そこから選んでおいてくれ」


 と陛下に言われていたので、部屋に戻っておこうかな。



 王城内の自分の部屋、というか借りている部屋に戻ると、ちょうど遣いの方が部屋を訪ねてきているところだった。遣いの方は紙の束を持っていたので、きっと件のお礼のリストだろう。受け取って礼を言う。

 部屋に入ってリストを読み進めていく。

 豪華な剣、草薙剣があるのでいらない。宝石のついたアクセサリー、そんなゴテゴテしたものはいらない。うーん、なかなか欲しいものは見当たらないな。収納袋、もう持ってるな。しかも上限がわからないやつ。スキルの種、いらな…………ん? スキルの種? なんだか興味を引かれる名前だ。一応リストにはその物品の紹介文が一行ほどで書かれているのだが、そこにも「詳細不明」と書かれているのみだった。

 少し、というかだいぶ気になったので、書記官さんたちには【採取】スキルのことと並行でスキルの種のことも調べてもらうことにした。



 数日後。国王陛下に呼び出された俺は、いつもの通り応接間にいた。

 そこにいた陛下は開口一番嬉しそうに、


「おお、ソウヤ殿。お主が見つけてくれたスキルの種だがな、詳しいことがわかったぞ!」


 と言う。おお、それは重畳。それで、どんな効果なのだろうか。


「あの種は食べるとその者が持つスキルの効果を上げてくれるらしいのだ! よくはわからぬが恐らくお主の言う『星を上げる』ということなのではないか?」


 スキルの効果を上げるか! それは確かに、星を上げてくれそうな響きである。あと問題があるとすれば、


「そうですね。恐らくはそういうことなのではないかと。して、そのスキルの種ですが、国庫にあるということは結構な宝物なのではないですか? 私が食べても大丈夫なのでしょうか?」


 この質問には意味が二つある。一つは、そんなに貴重なものを食べても良いのかという意味。もう一つは、そんなに古そうなものを食べて体的に大丈夫なのかという意味だ。


「うむ、元々お主に渡すつもりの物の一つだったのだ。問題あるまいて」


 ……陛下は前者の意味のみをとったようだ。はぁ、腹下さないといいけど……。



 目の前にスキルの種が運ばれてくる。特に埃を被ってるとか、発芽しそうとか、そういったことはなさそうだ。ただ手に取って触り心地を確認、鼻に近づけて匂いを確認と、とりあえずできそうな確認は一通りさせてもらった。そのうえで、ポリッと一口で種をいただく。

 種自体に味はなく、「種を食べた」という認識しかないのだが……本当に効果があるのだろうか?

 【スキル閲覧】で確認してみると、



――――――――――

 スキル

 【採取☆☆☆☆☆】

 採取の効果が六倍になる

 

 【採取道具☆☆☆】

 採取道具の扱いが上手くなり、採取の効果が四倍になる

 

 【高速採取☆☆☆☆】

 採取速度が五倍になる

 

 【万物採取】

 あらゆる物から採取できる


 【遠隔採取】

 直線触れていないものでも採取できる


 【剛力】

 力がさらに大幅に上がる


 【魔法】

 魔法を扱えるようになる


 【超再生】

 自己再生の速度がさらに格段に上がる


 【草薙剣】

 草薙剣を扱えるようになり、剣の扱いがとても上手くなる


 【打出大鎚】

 打出大鎚を扱えるようになり、鎚の扱いがとても上手くなる


 【スキル閲覧】

 自分のスキルを閲覧可能になる


 【魔眼】

 常人には視えないものが視えるようになる

――――――――――


 と、確かに星の数が増えている。というか全部の星が増えるのね。ランダムとかじゃなくてよかった。

 あと、地味に【怪力】が【剛力】に、【再生】が【超再生】になっている。単純に身体能力の強化は助かるな。


 

 こうしてスキルのレベルアップも間に合った俺は、今度こそ期日までゆっくりと休むことができたのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る