第31話
魔力を限界まで溜め込んだ俺の血を魔宝石と錬金することで魔宝石の魔力量を大きく増やせるのではないか。そう考えた俺は、「超すごい錬金術士」ケミィの協力のもと、実際にそれを行ってみることにした。
まずは大気中から魔力を採取し、体内の血液に溶かし込んでいく。最初のうちはすごい勢いで魔力が流れ込んでくるが、その勢いはだんだん弱まってくる。最終的には止まって、魔力の採取は完了だ。
次に魔力の溶けた血を取り出すために、手に針を指して傷口を搾り、取り出した血を試験管に入れる。一本分溜まったら回復魔法をかけてもらい傷を塞ぐ。これで準備は万端である。
錬金術に必要なのは材料と容器だ。材料を全て容器に入れ、【錬金】スキルを使うのである。実はたったこれだけで錬金は完了する。
というわけで、今回使う材料は拳大の真っ赤な魔宝石と俺の魔力の篭った真っ赤な血である。この二つをケミィが持ってきた釜状の容器に入れ、錬金を開始する。
「どんな物ができるんでしょうか……」
とみんな似たようなことを言ってドキドキしている。まあ真っ赤な物と真っ赤な物を錬金するので真っ赤な魔宝石ができるだけだろうけど。
そんな予想を他所に、錬金は進んでいく。釜の中で魔宝石と俺の血が混ざり合って光り輝く。輝きが収まると、ケミィが結果を確認するために釜を覗き込む。すると、
「えっ!? えっ!?」
とケミィが声を上げる。なんだなんだと俺たちも釜の中を覗くと……
そこにあったのは大きさの変わらない紫色の魔宝石であった。
「なんだ? 紫色に変わってるけど……成功したのか?」
みんなが不思議そうな顔をしている中、
「成功どころじゃありませんよっ!!」
とケミィが叫ぶ。何事かと話を聞くと、
「魔宝石は内包する魔力の量によって色が変わります。最も内包する魔力量が少ないのが赤、そこからオレンジ、黄色、緑と増えるんです。ただ、理論上はその先が青だとはわかっていたのですがそれを確認した人はまだいませんでした。今日までは」
「ん? 青? この魔宝石は紫色だけど?」
「はい。錬金の途中でオレンジ、黄色、緑、青と色が変わっていくのを確認しました。そして最終的には紫色になったんです。つまり青色の先があったんですよ!」
いまいちピンと来ていない俺たち。そんな中で、
「えっ、そ、そうだったんですか! じ、じゃあこれ、歴史的な発見じゃないですか!」
というのはリサ。さすがは魔法研究所の研究員だな。そして、
「つまり、魔宝石の魔力量は光のエネルギーと同様ということ……?」
と呟くのはソニア様だ。ひかりのえねるぎい?なんだそれは。
「あ、私たちの目に見える光は赤、オレンジ、黄色、緑、青、藍、紫といった色に分けられるんです。虹がわかりやすいですね。そして赤が最もエネルギーが低く、紫が最も高いと言われています。何故かまでは私にもわからないのですが……」
うん、難しすぎるな。俺は理解するのを放棄した。
で、だ。一番大事なのは、
「一年炎を灯し続けても保ちそうか?」
「余裕です! もうぜんっぜん問題ありません! 一年でも二年でも灯し続けちゃってください!」
お、おう……そうか。それはよかった。
じゃああとはリサに魔道具化してもらうだけだな。
見せられないということなので、宿の部屋でやってもらうとするか。と言ったところ、
「え!? い、いいんですか!? わ、私が盗んで逃げるなんて考えないんですか!?」
と言うので、
「そこは仲間だし信頼してるよ。まあ万が一盗まれたとしてもまた作るだけだし、俺の探知魔法は個人を特定できるからな。逃げられないと思うぞ」
と笑いながら返しておく。真面目な顔で言うと圧力になっちゃうからな。笑いながらくらいでちょうどいいと思ったのだが、リサは
「え、えぇー。特定できちゃうんですかぁ……」
とちょっと引いていた。なんでやねん。
目的も済んだ俺たちはケミィのアトリエを後にした。ケミィに錬金してもらったお礼を渡したところ、
「えぇー!! こんなのもらっちゃっていいんですかぁ!?」
と驚いていたな。
「何を渡したんですか?」
とみんなに聞かれたので、
「ああ、師匠と戦った時に採取した地龍の棘を何本か」
と返す。喜んでいたけど、師匠とは結局どういう繋がりだったんだろうな。聞きそびれてしまった。
宿でリサに魔宝石を魔道具化してもらった俺たちは、とうとう不死鳥の炎を求めてシュザックの丘に向け出発した。
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