第25話
【採取】スキルはなぜか戦闘を通して成長する。それに気づいた途端、師匠に表に連れ出された。しかも表と言っても山の麓である。これってつまり……
「ふむ、戦うのはあの二人と戦って以来か。滾るなあ」
そういうことですよねぇええ!?
なんで龍と戦う必要があるんですかねぇ!? しかも見ればみんなは観戦する気のようだ。見捨てられた!
一体一で龍と戦って生き残るとかそれこそ伝説クラスの偉業だぞ。
そんなことを考えているうちに師匠の身体が光り輝いて巨大化していく。そして眩さが消えるとそこにいたのは……
「……亀?」
いや、頭は龍なのだが胴体は甲羅に覆われており、亀を思わせるのだ。まあ普通の亀の甲羅はあんなに刺々しくないのだが。
「亀、か。これまでそのように言って俺を侮った者がどうなったか、身をもって知るがいい……!」
いかん、師匠の虎の尾、いや龍の尾を踏んでしまったらしい。もはや戦いは避けられない。ああもう、こうなったらやってやる!
「ホーミングスパイク!」
先制は師匠。なんと、特徴だった甲羅の棘を飛ばしてきたではないか。
この棘、速度はそうでもないが数が多いうえ一つ一つが大きい。しかも、避けても追尾してくるのだ。かくなる上は……
「採取! 採取! 採取採取採取採取採取採取!」
片っ端から採取するまでだ!
そうして採取に夢中になり、師匠本体が迫っていることに気づくのが遅れた。
師匠はその大きな口を開け、こちらに向かってきている。
――俺を食べる気か!?
龍の牙は全てを貫く。それは地龍であっても変わりはないだろう。つまり、食われた時点でアウトだ。
瞬時の判断で身体強化を発動し、大きく飛び退くことで難を逃れた。
だが空中で動くことはできない。そこに、
「ホーミングスパイク!」
新しく生え変わった棘が飛んでくる。なんて隙のない攻撃なんだ。
なんとか全て採取して着地する。と同時に走る。でないと……
ガツン!
と恐ろしい咀嚼音が後方で鳴り響く。本当に容赦ないな、師匠。
攻略のために探知魔法で師匠のスキルを見せてもらう。
すると、
――――――――
【上級龍(地)】
【怪力】
【堅牢】
【再生】
【魔法】
【育成】
――――――――
というとんでもないスキル群が見えた。【怪力】で力は上がるわ【堅牢】で防御力も上がるわでそのうえ【再生】持ちで【魔法】まで使うのかよ。……その内三つは俺も持ってるとか言ってはいけない。元のスペックが違うのだから。二を倍にするのと百を倍にするのでは全然違うだろ?
【上級龍(地)】は恐らく種族特有のスキルだと思われる。龍がブレスを吐くなどの能力を行使できるのもスキルがあってこそだ。上級と付くくらいなのだから普通より強力なのだろうな。なぜか使ってこないが。
【育成】はその名の通り植物などの育成に関するスキルだろうから今は関係ない……と考えるのは早計だな。【採取】だって立派な戦闘スキルだし。もしかして棘がすぐに生えてくるのってこれのせいか? いや、【再生】の方だろうか?
スキルは見破ったが、弱点を見つけるどころか手強さが浮き彫りになったぞ。しかも師匠は完全な敵ではないからスキルを奪う訳にもいかない……。そんなことを考えていると師匠が、
「お前の【採取】スキルは何のためにある? 敵から奪うためか? 違うだろう。原点に立ち戻れ!」
と伝えてくる。【採取】スキルの原点? 敵から奪うためではなく?
ノーソン村で暮らしていた頃は、このスキルは収穫物が倍になるくらいの認識だった。でもソニア様と旅に出て、いつの間にか敵からスキルを、そして命を奪うものへと変化していた。スキルの本質は変わらないのに、俺の認識が変わってしまっていたんだ。
違うだろう。俺のスキルは【採取】。何かを集めるために使うもの。今この状況で使うとしたら……
大気中の魔力を感じ、それを俺の中に集めていく。一瞬で大量の魔力が集まり、集まった魔力で俺の身体が光り輝く。
「「なんて魔力量なの(ですか)!?」」
この声はソニア様とルージュか。さすがは魔法の専門家。アッシュも何かは感じとっているようで顔が緊張している。
あとは集めた魔力を魔法に……そうだな、今回は矢だ。矢に変えて、そして、放つ!
空に向けて放った矢は雲を吹き飛ばし、また大気中の魔力へと還った。
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