第22話

「こんにちは! これから北行きですか?」


 うん、どう対処したら良いかわからないのでソニア様に任せよう。と目で合図する。

 

「えぇ、そうですが、あなた方は?」


 少し警戒した様子のソニア様。

 相手は四人組だ。全員が俺と変わらない歳に見える女性たちで、ピンクの髪、真珠色の髪、深い蒼の髪、緑の髪とカラフルだ。

 話しかけてきたのは真珠色の髪の女性のようで、


「あ、すみません! 申し遅れました、私たちは冒険者パーティ『ヴィーナス』です! 私はピピンと言います!」


 と言う。ずいぶんと元気なことで。

 

「ピピンが急にすみません。あ、私はヒナです」


 と言ってきたのはピンク色の髪の女性。


「ごめんなさいね〜。私はクレナよ〜」


 と緑髪の女性。

  

「いや、本当に申し訳ない。私はルファ。『ヴィーナス』のリーダーをしています」


 最後に蒼色の髪の女性が締めくくる。

 

「ああ、いや、突然でびっくりしただけだ。突然どうしたんだ?」


 本当に。突然どうしたのだろう。


「いやね、私たちもこれから北のノーソンまで行くんですわ。せっかくならみんなで一緒に行った方が楽しいし安全でしょ?」


 とルファ。なるほど、同行希望だったか。いやしかしノーソンまでとは偶然だな。突然すぎて少し怪しいところはあるが……


「いいですよ」


 えっ、ソニア様? 即決ですか?

 こちらの三人娘も同じことを思ったのか、怪訝な顔をしている。


「そんな顔をしないでください。彼女たちの言っていることには一理ありますし、こちらに危害を加えようとしても王国の最精鋭に無敗の採取屋さんまでいますから。大丈夫です」


 すごい信頼されてるな。そしてさらっと俺に称号がつけられている。無敗かあ。確かに俺は戦うようになってから無敗だな。

 今の言葉はわざと向こうに聞こえるように言ったのだろうが、それを聞いても向こうの表情は崩れる様子がない。これで本当に襲ってきたら余程の怖いもの知らずなのか余程の実力者なのかだが……。



 結局、『ヴィーナス』とは道を同じくする者同士ということで同行することになった。

 総勢九人の大所帯。その中に男は俺一人! あれー、おっかしいなー? どんな神様の悪戯なのだろうか。こんな運命にした神様を少し恨めしく思った。

 羨ましいと思われるかもしれんが単純に気まずい。あと居場所がない。そして仕事の分担が重い。三重苦である。

 いやだって水浴びとか寝る場所とか色々と別にしないと駄目だし、「女性」と「男性」で仕事を分けることになれば片方は俺一人だしな。



 それはさておき、不安だった『ヴィーナス』の同行だが、これが思った以上に良かった。実は『ヴィーナス』はプラチナランクの冒険者パーティだったのだ。



 冒険者というのは世界冒険社という会社に雇用されている所謂何でも屋だ。薬草の採取から魔物の退治までこなし、その実力によって個々人のランクとパーティのランクというもので分けられている。

 ランクは会社に寄せられた依頼を一定数こなすことで上げることができ、最低がブロンズ、そこからカッパー、シルバー、ゴールド、プラチナ、ミスリル、オリハルコンと上がっていく。

 個人ランクの平均切り下げがそのままパーティのランクとなるが、『ヴィーナス』の場合は全員プラチナランク。プラチナランクは上級の魔物までなら単体で討伐可能だと判断されている。ぶっちゃけて言うと王国の最精鋭と同レベルに強い。ミスリルまで行くと国に一人いるかどうかレベルなので、プラチナランクは実質的な会社の最精鋭と言える。

 というわけでまあまあな有名人だったので、安心感という面ではだいぶ上がった。そして実力は言わずもがなだ。



 そんな『ヴィーナス』の面々が何のためにノーソンみたいな田舎まで行くのかというと、何と俺の両親に会いに行くためらしい。

 俺の両親は以前冒険者だったのだが、訳あってノーソンに腰を落ち着けたらしい。その前のランクを両親は恥ずかしがって教えてくれなかったのだが、『ヴィーナス』によると二人ともミスリルランクで、『双翼』というパーティ名で相当に活躍したとか。

 そんな両親に一目会いたいと『ヴィーナス』の面々ははるばるノーソンまで行くのだとか。両親のことではあるが、俺としても嬉しかった。


 そして馬車に揺られること数日。俺たちはノーソン村に戻ったのだった。

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