第19話

 エルフの里に伝わる巻物。俺なら広げたらわかるらしいのだが……



「こ、これは!……何だ?」


 魔法言語で一つには「スキル閲覧」と書かれていて、もう一つには「魔眼」と書かれている。


「あなた、【採取】スキルで魔法を採取して【魔法】スキルを得たのでしょう?これらの巻物にはただ文字が書いてあるだけじゃなくて神力が込められている。言うなれば、スキルそのものなのよ」


 なるほど、だがそれなら誰かしらが既に使っていてもおかしくないのでは?

 すると、ただ……とフルールが続ける。


「これまで誰もスキルを得る方法がわからなかったの。だからそのまま残されている。でも、私は確信したわ。あなたの【採取】ならこれらのスキルを得ることができる。いえ、あなたにしかできないんでしょうね」


 そうか、俺にしかできない……


「本当にもらっていいんだな?宝なんだろ?」


「いいのよ。使えないのに持っているなんて、それこそ宝の持ち腐れなんだから。それにあなたはこの里を救った恩人よ。報いなければエルフの誇りが傷つくわ」


 なら、ありがたくいただこう。まずは【スキル閲覧】の方から、採取。そして【魔眼】も、採取っと。



 そういえばスキルを採取しても使い方が分からなければ意味が無いな。

 そうこぼすと、シシトウが、


「使い方ならば伝わってございます。【スキル閲覧】はその名の通り自分のスキルをいつでも見れるスキルです。『スキルオープン』と唱えていただければ、心の中でも構いません」


 なるほどな。試しに声に出してスキルを見てみる。すると、


「おおっ!?」


 スキルの一覧が空中に映し出される。えっと、スキルはっと。


――――――――――

 スキル

 【採取☆☆☆】

 採取の効果が四倍になる

 

 【採取道具☆☆】

 採取道具の扱いが上手くなり、採取の効果が三倍になる

 

 【高速採取☆☆】

 採取速度が三倍になる

 

 【万物採取】

 あらゆる物から採取できる


 【遠隔採取】

 直線触れていないものでも採取できる


 【怪力】

 力が大幅に上がる


 【魔法】

 魔法を扱えるようになる


 【再生】

 自己再生の速度が格段に上がる


 【草薙剣】

 草薙剣を扱えるようになり、剣の扱いがとても上手くなる


 【打出大鎚】

 打出大鎚を扱えるようになり、鎚の扱いがとても上手くなる


 【スキル閲覧】

 自分のスキルを閲覧可能になる


 【魔眼】

 常人には視えないものが視えるようになる

―――――――――― 



 えっ、これは……

 まずは落ち着こう。【採取】の☆の数が増えている。目標に着実に近づいていて嬉しい。

 それと前回確認してもらった時よりいくつかスキルが増えている。そのうち二つはエルフの巻物から得たもの。もう一つの【打出大鎚】だが、【草薙剣】と同じくドロップアイテムがらみだろうか。魔猪から大鎚が落ちたし。


 

 さて、落ち着いたところでやばい。やばくてやばいしやばいのだ。なにがやばいって、スキルの効果が見えていることだ。

 いままではスキルの名前からある程度の効果を類推し、使ってみて確かめるしかなかった。あるいは、既によく知られたスキルなら効果はわかった。だが、【スキル閲覧】は自分のスキルであれば獲得した時点で効果が丸わかりなのだ。

 ほとんどの人は生まれ持ったスキルだけと向き合えばいいからこの効果は不要だろう。だが、俺はスキルを採取できる。採取したスキルの使い方が最初からわかるとなれば、多くのスキルを使いこなすことができ、色々な面で有利になることは間違いない。

 まさに俺のためにあるようなスキルだった。


「これ、やばくね?」


「そうよ。だからこれを渡したんじゃない。あなたのスキルの量はとんでもないわ。こんなの他人に見せるのはやめときなさい。引かれるか妬まれるかして争いにならないとも限らないから」


 フルールと少しズレた会話をしながらも俺は自分が得たものの大きさに未だ驚いていた。

 


 そして期せずして【魔眼】の効果も発覚した。

 常人には見えないもの?と思ったが、周りを見渡してみるとよくわかる。森の方や、泉の方にキラキラしたものがふよふよと浮いている。これは……


「精霊が視えてる?」


「そうですか、精霊が。魔眼は常人には視えないものが視えるそうですがよもや精霊が視えるとは。我々と同じですね」


 シシトウが驚いたように言う。エルフには精霊が視えるのか。だがそれだけなら「精霊眼」とかでも良い気がするけど。


「他にも色々視えるそうですよ。詳しくは伝わっていませんが、霊が視えるとか、人の死期が視えるとか。まあ眉唾な噂程度のものではあります」


 うげ、そんなものどうしろってんだ。意識的に使ったり使わなかったりできるみたいだから普段は切っておこう。


 

 そうしてスキルの確認を終えた俺たちは一晩中宴を楽しんだ。

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