第13話
「これは『採取屋』ソウヤに対する正式な依頼だ。成功した暁には報酬ははずむと約束しよう。だから、頼む」
国王陛下が頭を下げる。
「「「へ、陛下、おやめください!」」」
臣下たちと俺の声が重なる。国家のトップがそう簡単に頭を下げて良いものではないだろうに。
「国王ではなく、一人の男としての頼みだ。どうか」
「わ、わかりましたから!お顔をお上げください!」
そう言うと陛下はやっと顔を上げる。
「では……」
「ええ、お引き受けします。必ずやり遂げてみせます」
正直、普通なら「採取屋」が受ける依頼ではない。だが、これは俺にしか達成できない依頼だ。ただ採取するのではなく、戦って、多くを勝ち取るのだ。
「助かる。ではエルフの里、及びその後の材料採取までの随行員を紹介しよう」
随行員?随行って、偉い人について行くって意味では?
「もちろん私も同行しますので!」
疑問が顔に出ていたのか、隣でソニア様がはっきりと言う。え、ソニア様自ら行くんですか?
「まずは王国近衛騎士団から騎士アズールだ」
陛下がそう言うと、碧い軽装の鎧を来た女性が長い金髪を靡かせながら入ってくる。
「近衛騎士団所属のアズールと申します。槍の扱いには自信があります。よろしくお願いいたします」
「次に宮廷魔法士団より魔法使いルージュだ」
続いて、紅いローブを纏った髪も紅い女性が入室する。
「宮廷魔法士団所属のルージュよ。炎の魔法では誰にも負けないわ」
「そして王家直属の影『アラクネ』のアッシュだ」
今度は誰も入ってこない。不思議に思っていると背後から、
「アッシュ。よろしく」
と声をかけられる。いつの間にか灰色のショートヘアの少女?に背後を取られていた。相当な腕のようだ。
そこに俺を含めた五名が今回の旅のメンバーのようだ。……あれ?男が俺一人では?まあ些事だ、些事。
「エルフの里がある森は、王都から東に一週間ほど行かねばならん。準備は万全にな」
と陛下が言ってその場は解散となった。
その日は王城の客室に泊まることになった。でもその前に……
「教会でスキルを確認してもらわないとな」
いつものように教会でスキルを確認してもらう。
するとしっかりと【怪力】のスキルが手に入っていることが確認できた。これでスキルの採取については検証完了だな。採取したスキルは相手からはなくなり、自分のものになる。これで触らないといけなければ厄介というかメリットとデメリットの釣り合いが取れていたのだが……
俺は【遠隔採取】というスキルを得ていた。うん、壊れスキルだな。もはや効果の確認をする必要もない。これは、手で触れていないものからも採取ができるスキルだろう。うーん、いつ獲得したんだろうか。
探知魔法と組み合わせれば大変なことになりそうだ。悪いことには使わんことにしないとな。うん。
王城に帰ると今度は顔パスで入ることができた。気持ちがいいな、これは。
宛てがわれた部屋に入ると、待っていたのは広々とした空間に王都を一望できる眺めの良い窓、そしてなによりふかふかのベッドだ。
王家の方たちが病気で臥せっている中、こんなに良い思いをしていいのかと思うが、その方たちを助けるためにも休めるときには休まないといけない。つまり、城の中にある風呂に入ることも、美味い夕飯を食べることも、全ては他人のためなのだ。多分。
最高の住環境を堪能した翌朝、早速出発することにした。出発の準備は既に整っていたし、あまり長居して王妃様たちの病状が悪化しても困るしな。
王城の門の前で用意してもらった馬車に乗り込む。この間と同じ木造の馬車だ。今回もソニア様が乗る馬車と、俺、アズール、ルージュ、アッシュが乗る馬車とに分かれる。正直、一つの馬車に男一人女性三人は気まずいのだが……。
あ、荷物は俺の収納袋に全部入れてある。着替えとかもあるので個人のものは一つの袋にまとめて入れてもらっている。それにプラスしてとりあえず一週間分の食料やら旅道具やらが入っているのだが、まったく満杯になる気配がない。どうなってるんだ、この収納袋。
ともかく、これで準備万端だ。目指せ、エルフの里!
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