第8話
無事ダイニーに着いた俺たち。宿を取って、街を散策する。今回は魔物との戦いなどはなかったので教会はスルーだ。
ダイニーは王都に次ぐ大きさの都市で、街灯、水道、調理場などに魔法道具が盛んに導入されている。街の中心部には魔法研究所があり、生活に使える魔法や様々な魔法道具を作って人々の暮らしに貢献している。
今回はソニア様がいるということもあり、特別に魔法研究所の見学をさせてもらえることになった。
「け、研究員のリサです。ほ、本日は皆様の案内を任されています。よ、よろしくお願いします」
案内役はどうやらとても緊張しているらしい。無理もない、王女御一行だからな。俺も逆の立場ならああなるかもしれない。なので一通り挨拶したあとは平民である俺が話役に回っておく。
「初歩的な質問で悪いが、魔法道具って人もいないのにどうやって動かしているんだ?」
「あ、はい、それはですね、これを使っています」
とリサが取り出したのは見覚えのある石、魔宝石だ。
「魔宝石は魔力を持った石です。これに、特殊な方法である種の魔法を発動するという命令を書き込んで発動させています」
「特殊な方法?」
「あ、それは企業秘密です」
そこまでは教えてくれないのか。まあ教えてもらったところで俺も魔法を使えるわけじゃないけどな。
「まあこの場で秘密にしたところで、王家には方法を提出していますので、ソニア様は調べればおわかりになると思いますが……」
あ、そうか。それもそうだよな。ソニア様がどことなく「知っている」風に聞いていたのはそのためか。読書好きであるソニア様は魔法道具関連の本も読んだことがあったんだろうな。
そんな話をしながら、様々な魔法道具を見て回る。戦闘で使えるような物から、家事を楽にする物まで、本当に多くの種類の魔法道具があり、俺たちは目を輝かせていた。
「こちらは新魔法の開発をしている場所です」
そこではみんなが紙に向かって何か書いている。
「魔法の発動するところを見たことは?」
俺は母が魔法使いだったので見慣れている。ソニア様は自身が魔法使いだから言うまでもないな。
「魔法使いが魔法を発動する際、言葉を発する必要はありません。しかし、実際には魔力に命令をする必要があります。この命令に用いるのが魔法言語です。魔法言語は単語、文法、使用方法など、未だその全てを解明できているわけではありません。その研究をしているのがこちらになります」
「全てわかっていないということは事故が起こったりもするのか?」
「ええ、日常茶飯事です」
日常茶飯事て……。頼むからソニア様がいるところで起こしてくれるなよ……。という願いは儚く、
「危ない!避けてください!」
との声が鳴り響く。ソニア様の方を見る。特に何も異常はなさそうだ。となると……俺か!
気がついたときには目の前に大きな火球が迫っていた。躱すには気づくのが遅すぎた。ここは一か八か、火球に手を向けて……
「採取!」
…………ふぅ、危ないところだった。俺の身長ほどあった火球は跡形もなく消え去っていた。魔法って採取できるんだな。
「「「大丈夫ですか!?」」」
ソニア様、リサ、そして火球が飛んできた方向からも声がする。
「俺は大丈夫だが……」
「すみません、上級魔法の改良をしていたのですが制御しきれなくなってしまい……」
まったく、俺じゃなかったら消し炭になっていたぞ。
「しかし、火球が突然消えたように見えたのですが……」
「採取したんだよ。俺のスキルで」
「採取……?消したわけではなく?」
ああ、そういえばそうだな。採取はできたみたいだがどこにいったのやら。収納袋に行ったわけでもなさそうだし。まさかとは思うが……。後であそこに寄ってみよう。
「ああ、採ったんだよ。それはともかく、気をつけてくれ」
ソニア様の方に行っていたらと思い注意しておく。火球を放った研究員はペコペコと申し訳なさそうに頭を下げていた。
そんな感じで研究所の見学を楽しんだ俺たちはリサと別れ、急遽教会に向かった。
いつものようにスキルの確認をしてもらうと……
俺は【魔法】を獲得していた。
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