【中秋の名月を考える】〖一応本棚企画〗第2回〖5,000字で募集〗中秋の名月ってお題に良くないですか?
【中秋の名月を考える】
宋代の名詩人、蘇軾の「中秋の月」という詩があります。
暮雲 収まり尽くして 清寒 溢る。 銀寒 声無く 玉盤を 転ず。
此の生 此の夜長 なえに好からず。 名月 明年 何れの処 にか看ん。
ここでは月は玉盤に喩えられています。玉盤とは玉(宝石)で作った大きな皿のことです。蘇軾でなくとも美しい月を宝石に喩えたくなるのは昔の中国でも、今の私たちも変わらないみたいですね。
中秋とは前漢頃に成立したといわれる二十四節季――四季をさらに6分した(正確には8季をさらに3分した)暦によります。これは太陽暦とのずれを解消するためだったと言われています。
農耕が説によっては1万年も昔から始まっていた中国大陸では、植物の生育に心を砕き、暦を理解する一部の人間が、集団の労働力を集約させていくようになります。太陽暦には太陽の日々の計測が必要で、それは
その独占的な知識を目に見える形で表したのが、よく知られる英国のストーンヘンジです。動画で夏至とか冬至の太陽の動きを紹介しているのを見たことがある方もいらっしゃるでしょう。あれが、向こうの聖の知識の集大成なのです。お祭りの参加者に太陽の復活をわかりやすく伝えるための舞台装置だったのです。
一方、太陰暦は普通に毎日上る(新月は昼間なので見えませんが)月を基準にした素朴な暦でした。特に知識は必要ないので月の満ち欠けとだいたいの気候で、1年のうちのどのあたりなのか、どんな階層の人間でも理解したことでしょう。しかし太陽暦と異なり、太陰暦はズレが大きいのです。1公転29.5日。ずれが生じ、校正しなければならないことは自明の理といえましょう。
繰り返しますが暦が必要になるのは植物の生育を知るためです。つまり、農業を、その年の収穫を確実にするためのものなのです。
東アジアでは慣例的に太陰暦を採用し、閏月などを採用しつつ、農業に差し支えないように運用してきました。月の満ち欠けを見て、季節を知り、いつ種を蒔いたらいいかとか、いつ田んぼから水を減らしたらいいかとか、昨年のいつごろ何やったのか、それが今年はいつなのかを知るためには暦が必要なのです。昔は(今もそういうところはありますが)暦をフル活用して農作物を育てていたのです。
旧暦の8月15日は、農作物の多くが実りを約束される時期です。
今でも中国や台湾では中秋節として月餅を食べてお祝いをします。みなさんも月餅を食べたことありませんか? あのずっしりとしたやつです。日本ではお団子ですね。丸いところが共通しているのでしょうか。
日本の月見はやはりルーツはこの中秋節と同じくしています。平安時代に中国から伝わって、貴族社会でそのような風習が定着したんですね。
源氏物語でも8月の十五夜をなんと4回も見ています。いくら長編小説とは言え、これほど定着していたのだとちょっと驚いてしまいます。
その後、一般人にもその習慣が知られ、定着し、秋のお祭りと同様に、豊作を祝って中秋の名月を愛でるのです。
実りの季節を教えてくれる大切なお月様への感謝を込めて、というわけですね。
ところで日本神話では月はあまり出番がありません。ご存じ、天照大神は太陽、長男の月読が月、そして素戔嗚が海の神様ですが、古事記でも日本書紀でも天照と素戔嗚の対立を軸に物語が進んでいきます。
これは実は素戔嗚が後から来た神様だから、という説が有力です。もともとは天照と月読の物語だったものが、月読が素戔嗚にすり替わってしまったんですね。
どうしてこんなことになったのか、それは天照大神を中心とした古代の宗教改革に端を発するのですが、その辺を調べてみても面白いですよ。
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