第24回テーマ【僕たちが思うより、宇宙は渺々たるものなのだ!】主催者:しろたさま

 渺々びょうびょう――いつも使っている三省堂例解小学国語辞典にはない言葉ですね。ネットで調べると「果てしなく広いさま。遠くはるかなさま。」だそうで。

 なお「びょうは、10-11(1000億分の1)であることを示す」そうです。いかにも大陸で生まれた漢字という印象です。果てしなく遠いものまで見えてしまう大陸の地平線に思いを馳せます。ちょうど偶然にもらじる・らじるの聞き逃し配信で聞いているのが『ボロディンの交響詩「中央アジアの草原で」』だったりして、偶然としてはできすぎてます。

 さて、お題を見て最初に考えた私の「宇宙の渺々」とそんなに離れていなくて安心しました。たぶん、他の方は今の宇宙の外のことまで書かれるかと思いますので、そっちは譲ります。マルチバース理論なんて果てしなすぎますし、3次元の存在の我々には数十次元が必要な世界のことなんて分かりません。宇宙物理学者が3次元の存在じゃ無いみたいな書き方するなって? ごもっとも。でも本当に宇宙物理学者ってすごいですよね。

 ここからが本題です。

 

女子小学生と大学生の犯罪にならないラブラブな日常

https://kakuyomu.jp/works/16817330667423029957


 というのを書いておりまして、つい最近、脱稿したのですが、ヒロインは小学5年生で、自分が何をしたいのか、自分がこれから何をしたいのか、ちょっと自分探しをするというのがテーマの一つでした。彼女に1年間を通していろいろなものを見て貰いました。そのために私もいろいろ調べました。園芸や料理、歴史的なものからバードウオッチングに始まる自然観察まで、割と今の4、5年生の学習範囲と絡めて勉強して貰ったのですが、作者の中の彼女が気がつき、驚き、最終的に興味を持ったのは干潟という世界の広さでした。

 江戸川放水路をカヌーで漕いで下り、その下流部で見た干潟の生き物たちの豊富さに驚いたのです。人間の目線は大雑把に高さが1~2メートルだと思いますが、もし、干潟で5センチほどの高さまでぐっと下げることができたのなら、そこにはアフリカのサバンナも驚くほどのサバイバル世界が見えてくるのです。

 干潟の生き物たちが泥と海水の境目で独自の生態系を作り、時に水鳥という巨大モンスターについばまれて命を落としてしまう残酷な世界です。

 そんなすごい、サバイバル世界がすぐそこの川の岸辺に広がっています。その干潟の生き物たちでさえ、より小さなプランクトンのミクロの世界にまで解像度を上げることができるのなら、捕食者となります。プランクトンにはプランクトンのレベルでのサバイバル世界が広がっているのです。

 実はその辺の草むらにだってすごい生態系があったりします。ダンゴムシやミミズが土壌を作り、その土を微生物がさらに耕し、草が繁茂し、無数の昆虫がいて、その昆虫を食べにトカゲやヤモリが来たりします。

 もちろん、それらは学校で習ったことばかりだと思います。しかし、実際に視点を下げて、解像度をあげるだけで世界は広がりを増します。解像度を増した世界の連なりが、地球の全体像の解像度を上げ、人間が頭の中に思い描いている地球より遙かに大きな地球であることに思いを馳せることができるようになります。

 我々は先人たちのお陰で地球は宇宙の中心ではなく、太陽を中心としたシステムのごく一部であることを知っています。その太陽ですら、天の川銀河宇宙の極々一部だということも知っています。

 しかし地球1つとったところで、個である人には理解のできない渺々びょうびょうたるものなのです。

 知識によって頭で考えられる宇宙の広さももちろん渺々としています。ですが、自分の周りにちょっと目を向けてみるだけで世界は広がりを増し、渺々と感じることができるのです。

 それは発見と呼べるほどの感動を与えてくれることすらあります。

 ほぼ1年を掛けて、上記の作品を書き終え、知ったことの1つです。物語を書くと言うことは自分を文字に書き起こすことでもありますが、同時にキャラクターたちと一緒に成長する機会でもあることも知りました。そちらもまた渺々たるほどの広がりを虚構と現実の中に持つことができるということでもあると思います。

 ここまでお読みくださった方々も、是非、現実で、そしてこうやって文字を認めている最中でも、世界が――宇宙が広がっていくことを、改めて意識してみてはいかがでしょうか。

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