第4話隠者

 『恋人達』の道を突き進み、次の道へと再びタロットカードをカットした。


 「次は『隠者』ね。何を犠牲にすればいいのかしら?!」


 いともたやすく言っている由香里に英之は少々怒りがこみ上げていた。


 「お前にとっては他人事かもしれないが、俺にとってはかけがえのないもを失うんだ。そんな楽観的に言わないでくれ。」

 

 ふたりは『隠者』の示す道を歩き始めた。


 「ご両人。どうか私に食べ物をあたえ給え。」


 そう言いながら近寄って来たのは、今にでも朽ち果てそうな老婆だ。


 「何か私に食べ物を与えて下されば、お礼に一つ願いを叶えて差し上げよう。」


 食べ物など、持っていないふたりは老婆に食べ物をあげたいが成すすべがない。


 「食べ物を想像してくれされ。さすれば私の力で現実に食べ物を存在させる事が出来る。私は皆が想像したモノを現実のモノにする力があるが想像する力が無い。どうか想像してくれされ。」


 ふたりは食べ物を想像してみた。すると由香里は無事だったが英之から想像する力が失くなってしまった。


 老婆は食べ物を実際に存在させると1枚のオラクルカードを英之に渡して姿を消した。


 「エナジーオラクルカードか。これが命の恩人と何の関係があるんだ。」


 英之はカードの意味を見ても気が付かなかった。想像する力を失ったからだ。すなわちリーディング出来ないのだ。


 「よく見て。これはミカエルよ。」


 由香里はエナジーオラクルカードに描かれている大天使がミカエルだと気づいた。


 「大天使ミカエル・・・アイツが命の恩人。」


 そう呟いた途端、大粒の涙がこぼれた。

 想像する力を犠牲にして得たのはもう一人の親友である大天使ミカエルが命の恩人という事であった。 





 

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