第4話 真相はそこに
女の胸から真っ赤な血が噴き出した。同時に、私の背後から悲鳴が聞こえた。あの、口の部分にいた半透明の女が私の背後に迫っていたのだ。
しかし、半透明の女は叫びながら仰向けに倒れてしまった。私は半透明の女の胸にも光剣を突き刺した。彼女は数度痙攣した後に動かなくなった。
周囲を見渡してみたが、大蜘蛛の触手は全て活動を停止しており、何体もいた疑似霊魂も消えていた。周囲にいた戦車や人型機動兵器に全て沈黙していた。
月城はザーラの背に覆いかぶさってまだ腰を振っていた。私は彼の尻を蹴飛ばし、ザーラから引きはがした。
「邪魔しないでくれ」
「黙れ、馬鹿者」
私は奴の顎を蹴り飛ばした。月城は四つん這いになって逃げようとするが、彼の尻を再び蹴飛ばした。白目を剥き舌を出して痙攣している月城の髪を掴んで上半身を起こす。
「おい、月城。私がわかるか?」
「君は着任したばかりの……マリアンヌ……」
「バリエ中尉だ。正気に戻ったようだな」
やや手荒な真似をしたからか、月城の目に光が戻っていた。
「僕は……何を?」
「覚えてないのか?」
「わからない。しかし、セックスしている夢を見ていた。美女に囲まれていた」
「そうか。それは良かったな。周りを見てみろ」
月城は周囲を見渡して目を見開いた。
「ここは? その辺に転がっている残骸は何だ? 僕はどうしてここにいるんだ?」
「さあ? とりあえず、服を着ろ」
月城はフラフラと立ち上がり、自ら脱いだ衣類を拾ってから身に着けていた。私は光剣を月城へと向けた。
「僕が何をしたんだ」
「部隊に迷惑かけた」
「だから何を……」
私は光剣を月城に向けたまま事件の概要を話した。彼が夜な夜な基地を抜け出してここに来ていた事……それを不審に思って追跡した兵士が何人も行方不明となっている事……装甲車まで破壊された事などを。
「そんな馬鹿な? 僕は何も知らない。覚えていない。夢の中でセックスしていただけだ」
「そうか……とりあえず、胸ポケットに入っている物を出せ」
「胸ポケット……これは……」
「隠したいのか?」
「いや……これは違う」
「そう思いたいだけなんだろ? 淡く光っているし、細い光の糸が大蜘蛛に繋がっているぞ」
「あ……」
月城も気づいたらしい。この異界では本来見えない疑似霊魂やシルバーコードが見えるのだ。月城の持っている何かは確実にあの大蜘蛛に繋がっていた。
月城は恐る恐る胸ポケットからその何かをつまみだした。それは上半身だけの女神像だった。
「よこせ」
「いや、これは渡せない」
「ならば、お前と共に破壊するだけだ。ポーラ、主砲で狙え」
「了解」
キャタピラ音を響かせながらマルズバーンが接近してきた。ポーラは150ミリの主砲を俯角に取り、月城の胸に突き付けた。
「止めてくれ。戦車の主砲で人を撃つなんてあり得ない」
「ならば渡せ」
「わかった」
月城は渋々とその女神像を差しだした。私はそれを受取ってから放り投げ、光剣で真っ二つに切り裂いた。
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