第61話 新たな同行者
国王陛下の部屋に呼び出された翌日。
俺は
「また余計なトラブルに首を突っ込んだんですか」
「またってなんだまたって」
マシロは何故かご立腹のようだ。
「ノアからも言ってあげなさい」
「ぼ、僕がですか。え~とたぶん客観的に見るとユートさんは、ゴブリンキングの討伐に始まって、船の上での戦闘、リズさんをローレリアに連れていくことや、鞭で叩かれそうになった人を庇ったり、レジスタンスに参加して国王様達を助けたりもしましたね。それと先日クーデターの首謀者の一人を捕まえるために関所に行きました。そして今回の平原に住む魔物の討伐と。確かにトラブルに自分から向かっているように見えますね」
「ノ、ノアまでそんな⋯⋯」
「僕が思っている訳じゃありませんよ。それに僕は、ユートさんの行いは素晴らしいと思っていますから」
「そうかな」
「はい!」
俺は自分からトラブルに向かっているのか。だけど困っている人がいたら助けたいって思うのが普通だよな。
しかし自分の考えにマシロとノアを巻き込むのは、少し申し訳なく思ってきた。
「二人はもし嫌だったら残ってもいいんだぞ」
「やれやれですね。お世話係が行くのに、私が残ってどうするのですか。ユートはそんな心配はしなくていいです⋯⋯それにリズのためでもあるんでしょ」
マシロはそっぽを向きながらポツリと呟く。
素直じゃない奴だ。何だかんだリズのことが好きなのかな?
「そうですよ。僕達はユートさんに一生ついて行きますから」
「二人ともありがとう」
勇者パーティーの時とは違い、俺は良い仲間に恵まれたものだ。
「今度の敵は手強そうだぞ」
「ふん、誰に言ってるのですか? 私にかかれば余裕ですよ」
「足手まといにならないように頑張り⋯⋯あれ? この匂いは⋯⋯」
ノアが突然足を止め、クンクンと鼻を動かす。
なんだ? 何かあるのか?
そしてノアは東門の側にある太い木の所に向かうと⋯⋯
「うわっ!」
突然ノアの姿が見えなくなった。今誰かの手に捕まったように見えたぞ。
俺とマシロは急いで太い木の陰に向かうとそこにいたのは⋯⋯
「ユート様おはようございます」
ノアを抱きかかえたリズがいた。
「えっ? 何でリズがここに?」
「ふふん⋯⋯この私を見送りに来たという訳ですね。良い心がけです」
「あっ、なるほど」
確かにリズなら見送りに来てもおかしくはないな。だけど俺とマシロの予想は違っていた。
「え~と見送りに来た訳ではなくて⋯⋯私も連れていって下さい!」
リズが頭を下げてお願いをしてきた。
「リズの願いは聞いてあげたいけど、危険だからだめだ」
「そのような危険な場所に、ユート様を送り出さなければならないのですか?」
「リズはこの国の王族なんだ。危険とわかっているのに連れていけないよ」
それにもし国王陛下に知られたら、絶対に肩を捕まれて怒られるだろうな。
「お母様は賛成して下さいました。それにお祖父様だって危険とわかっていて未開の地に向かったはずです」
「その時と今では状況が違うし、リズのお祖父さんは兵を率いる立場でもあったから」
「お願いしますユート様」
リズは一度決めたら突き進むタイプっぽいから、諦めてくれなさそうだな。でもリズは人を困らせるようなことは言わない子だ。わざわざ討伐に行きたいだなんて、何か理由があるのかな?
「どうして討伐に行きたいんだ?」
「⋯⋯王家には代々引き継がれている指輪がありまして⋯⋯」
「もしかしてそれをお祖父さんが持っているの?」
「はい。いつか私に引き継がれる時が楽しみだと、嬉しそうに語って下さいました。もちろんお祖父様が亡くなったのは十年も前のことなので、絶対に指輪が見つかるとは思っていません。ですがユート様が未開の地に行かれると聞いて、じっとしていることが出来なくて⋯⋯」
国王陛下からその話は聞いてないな。俺の重荷になると思って黙っていたのだろうか。
でも今回の討伐相手、
出来ればリズの願いは聞いてあげたいけど⋯⋯
「何を悩んでいるのですか? 雄ならウジウジせず雌の一人くらい守ると言いなさい」
「そうだな。マシロの言うとおりだな」
どんな相手が来ても俺がリズを守ればいい。ただそれだけだ。
「そ、それに⋯⋯万が一の時は私が守ってあげますから安心しなさい」
「僕も微力ながらリズさんを守りますよ」
「二人ともありがとうございます!」
リズはマシロも抱き上げ、二人を抱きしめる。
「や、やめなさい暑苦しい!」
「リ、リズさん!」
リズの胸に包まれて二人はとても気持ち良さそう⋯⋯いや、苦しそうだ。
「ユート様もありがとうございます」
「指輪、見つかるといいね」
「はい」
「えっ? ユートのことは抱きしめないのですか?」
何か前もこんなことがあったな。
リズは警戒心がないから、また手を広げて俺を迎えてくれるのか?
まあ断るのも悪いから軽く抱きしめてみようかな。
俺は頭の中でそのようなことを考えていたが、予想は違った。
「ユ、ユート様を抱きしめるなんて、恐れ多いです」
「あらそうですか。残念でしたね」
「いや、別に」
本当はリズに拒絶されてちょっとショックだけど、カッコ悪いから平静を装う。
だけど心の中では、何で前は受け入れてくれたのに今はダメなんだと言いたいぞ。
少しモヤモヤした気持ちをかかえて、俺達は街を出て東へ向かうのであった。
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