第9話

門司港の美しい朝焼けが空を染める頃、町全体が活気に溢れていた。歴史的な建物が立ち並ぶこの港町は、今日から始まる女子プロゴルフ大会のために、一段と賑やかさを増している。出場選手たちが集まるクラブハウスも例外ではなく、緊張と期待が入り混じる独特の雰囲気が漂っていた。


月影玲奈は、クラブハウスの窓から広がるゴルフコースを眺めながら、深呼吸をした。身長165cmの彼女は、ショートカットの黒髪を風になびかせ、鋭い目でコースの隅々まで見渡す。今日の大会は、彼女にとって非常に重要な試合だ。母子家庭で育ち、多くの困難を乗り越えてきた彼女にとって、プロゴルファーとしての成功は母親への最大の恩返しでもあった。


「大丈夫、玲奈。あなたならできるわ。」キャディーの蒼井佳奈が優しく声をかける。小柄で目立たない佳奈は、玲奈の唯一の味方だった。彼女は玲奈の不安を和らげるために、いつも励ましの言葉をかけ続けた。


しかし、玲奈のライバルである黒川真央は、まったく違う存在感を放っていた。黒川財閥の令嬢である真央は、長い茶髪をなびかせ、整った顔立ちと自信に満ちた態度でクラブハウスを歩いていた。彼女のキャディー、桜井良子もまた、背が高く引き締まった体つきで、プロフェッショナルなオーラを漂わせていた。


その時、玲奈の視線がふと一組の男女に引き寄せられた。三田村香織と藤田涼介だ。彼らは、宝石学者のレベッカ・ブラックの招待でゴルフ観戦に訪れていた。香織は中程度の長さの黒髪に眼鏡をかけ、冷静な表情でコースを見渡している。涼介は短髪で筋肉質の体を持ち、柔和な笑顔を浮かべていた。


「彼らが探偵の三田村香織と藤田涼介?レベッカの友人だって聞いたけど、なんだか頼りになりそうね。」玲奈は心の中でそう思った。


しかし、その日の試合で玲奈のショットが不自然なスライスを繰り返し、成績が急落することを、彼女はまだ知らなかった。何かがおかしい。直感的にそう感じた玲奈は、香織と涼介に助けを求める決心をするのだった。


こうして、玲奈のプロゴルフ人生を左右する大きな事件が、門司港の舞台で幕を開けるのだった。

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