第6話

香織と涼介は、佐藤真一が桐島の体調不良に関与している可能性を探るため、彼の背景をさらに詳しく調べ始めた。佐藤の過去の経歴を調査するうちに、彼が以前に働いていたスポーツクラブで似たような事件があったことが判明した。そこで彼は選手たちに特定のサプリメントを推奨し、その後に選手たちが体調を崩す事件が発生していたのだった。


「これは偶然とは思えない」と涼介が言った。「佐藤は何か大きな計画を持っているに違いない」


「彼が何を狙っているのかを明らかにしなければならないわ」と香織が頷いた。


二人はさらに証拠を集めるため、佐藤のオフィスに向かった。そこで彼のデスクの引き出しから、いくつかの文書を見つけた。その中には、サプリメントの仕入れ先との詳細なやり取りが記録されており、疑わしい取引が行われていたことが示されていた。


「これが証拠になるかもしれない」と涼介が言った。「佐藤は特定のサプリメントを選手たちに摂取させ、その効果を試すために意図的に成分を変更していたんだ」


「その結果、桐島はアレルギー反応を起こして倒れたというわけね」と香織が続けた。


二人は集めた証拠を手に、佐藤真一と対峙することに決めた。香織と涼介は、佐藤のオフィスに向かい、そのドアをノックした。佐藤が出迎えたとき、彼の顔には不安の色が浮かんでいた。


「お話があります、佐藤さん」と香織が静かに言った。


「何でしょうか?」佐藤は表情を硬くして答えた。


「桐島選手のサプリメントについてです。これを見てください」と香織は手に持っていた証拠の文書を見せた。「あなたが選手たちに推奨していたサプリメントには、桐島選手がアレルギーを持つ成分が含まれていました」


佐藤の顔色が変わったが、彼は冷静を装った。「それは何かの間違いだ。私はそんなことは知らなかった」


「本当にそうでしょうか?」涼介が鋭く追及した。「あなたが以前働いていたスポーツクラブでも同様の事件があったことを私たちは知っています。そのときも、選手たちが体調を崩したのはあなたの推奨したサプリメントが原因でしたね」


「そんな…それは過去のことだ。今とは関係ない」と佐藤は震える声で反論した。


「あなたが故意に成分を変更し、その効果を試していたことを示す証拠もここにあります」と香織がさらに追及すると、佐藤の顔は青ざめた。


「私は…ただ、選手たちのパフォーマンスを向上させたかっただけなんだ」と佐藤はついに自白し始めた。「成分を変えることで効果が出るか試していた。でも、桐島が倒れるなんて思ってもみなかった…」


「その行為がどれだけ危険なものか、あなたは理解していたはずです」と涼介が冷静に言った。「あなたの行為は桐島の命を危険に晒したのです」


佐藤は肩を落とし、全てを打ち明けた。「私は愚かだった。選手たちのためだと思っていたけど、それが間違いだった…」


香織と涼介は、佐藤の自白を受け、彼を大学の管理者に引き渡すことにした。佐藤は大学から追放され、法的な責任を問われることとなった。


桐島悠斗は病院で回復を見せ、再びトレーニングを開始することができるようになった。彼の体調は徐々に改善し、再びチームのエースとしての復帰が期待されていた。


そして、再び駅伝大会の日がやってきた。桐島はスタートラインに立ち、自分の力を信じて全力を尽くす決意を新たにしていた。スタートの合図とともに、彼は再び前へと駆け出した。


「頑張れ、桐島!」チームメイトや観客の声援が響き渡る中、桐島は力強く走り続けた。


レースの途中で何度も困難に直面したが、彼はその度に自分を奮い立たせた。そして、ついにゴールが見えた瞬間、桐島は全力でスパートをかけ、チームを優勝に導いた。


「やった!」チームメイトたちは歓喜に包まれ、桐島を称えた。香織と涼介もその光景を見守りながら、彼の復帰を祝った。


「これで一件落着ね」と香織が微笑んだ。


「そうだな。でも、次の依頼が来るまでの休息は短いかもしれないぞ」と涼介が冗談めかして言った。


香織と涼介は、桐島とチームメイトたちと共に祝勝会に参加し、彼の復帰とチームの優勝を共に喜んだ。新たな事件が訪れるその日まで、二人はしばしの安らぎを楽しむのだった。

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