第4話

白鷺大学の広々としたキャンパスの中庭で、香織と涼介は再び調査の糸口を求めて歩いていた。香織の目は鋭く、涼介もその後を追いながら、考えを巡らせていた。桐島が倒れた原因が何であるのか、二人はまだ解明できていなかったが、その手がかりが特製パスタにあると考えていた。


「まずはシェフの大野翼さんに話を聞こう」と香織が言った。


大学の食堂に足を踏み入れた二人は、大野シェフの元へ向かった。彼は忙しそうにキッチンで作業をしていたが、二人の訪問を受け入れ、話をするために手を止めた。


「桐島選手の件でお話を伺いたいのですが」と涼介が切り出した。


「もちろんです。彼の体調不良には驚きました。私が作ったパスタに何か問題があったのでしょうか?」と大野シェフは不安げに答えた。


「その可能性があります。具体的には、どのような材料を使いましたか?」香織が尋ねる。


大野シェフは詳細を語り始めた。「鶏胸肉、ブロッコリー、ミニトマト、ニンニク、オリーブオイル、白ワイン、鶏ガラスープの素、塩、黒こしょう、パルメザンチーズ、そしてフレッシュバジルを使いました。すべて新鮮で、特に変わったものは使っていません」


香織はメモを取りながら、質問を続けた。「これらの材料は、全て同じ日に仕入れたものでしょうか?」


「はい、当日朝に全ての材料を確認しました。何も問題はなかったはずです」と大野シェフは答えた。


涼介は少し考え込んでから、質問を投げかけた。「料理を作る際に何か特別なことはありましたか?例えば、特定の時間に誰かがキッチンに出入りしたとか」


「いや、特に変わったことはありませんでした。ただ、栄養士の相馬奈央さんがレシピの指示を出していたくらいです」と大野シェフは答えた。


次に二人は、栄養士の相馬奈央に話を聞くため、大学の健康管理センターへ向かった。奈央は落ち着いた様子で二人を迎え入れた。


「桐島選手の食事について詳しく教えていただけますか?」香織が尋ねた。


「もちろんです。特製パスタは彼のエネルギー補給のために特別に考案したメニューです。すべての材料は彼の体調を考慮して選びました」と奈央は説明した。


「彼のアレルギーや体調に関する情報は把握していますか?」涼介が続けた。


「はい、もちろんです。彼は特定のナッツにアレルギーがあるので、それを避けるようにしています。しかし、今回のパスタにはナッツは使用していません」と奈央は断言した。


香織は何か見落としているものがあるのではないかと感じ、再び材料のリストを見返した。その時、彼女の目に一つの材料が引っかかった。


「昨日、桐島選手の部屋で見つけたサプリメントについて教えてください」と香織が尋ねた。


奈央は少し戸惑ったようだったが、「あれは彼が普段から摂取しているものです。体調管理のために特別に選んだもので、問題があるとは思っていませんでした」と答えた。


「しかし、成分表を確認したところ、桐島選手がアレルギーを持つ特定の成分が含まれていることがわかりました」と涼介が指摘した。


奈央は驚いた表情を見せ、「そんなはずは…でも、確かに最近、サプリメントの仕入れ先が変わったばかりです。成分表を見落としていたかもしれません」と呟いた。


「そのサプリメントの成分表を確認させていただけますか?」香織が尋ねる。


奈央は急いで成分表を取り出し、二人に見せた。香織と涼介は慎重に成分を確認し、桐島がアレルギーを持つ成分が含まれていることを再確認した。


「これが原因かもしれませんね」と香織は言った。「でも、どうして彼はそんなものを摂取したんだろう?」


調査はまだ始まったばかりだった。桐島の体調不良の背後には、何か大きな陰謀が隠されているかもしれない。香織と涼介は、さらに深く調査を進める決意を固めた。


次の手がかりを求めて、二人は再び関係者への聞き込みを開始する。桐島の体調不良の原因を突き止めるために、彼らはどこまでも真実を追求していくのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る