お喋りな友人

番外編として、宝石を隠し終えてから拠点に戻るまでの車内の様子です。

地の文無しで会話のみになります。気楽に読んで楽しんでください。

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『追手も撒いたみたいだ。あっちの状況も安定しているし、休憩していいぞ』

「上手く行ったってこと!?」


『まぁ、宝石の引き渡しも報酬の受け取りもまだだから、上手く行ったとは言い難いが……』

「その辺はリチャードさんの仕事でしょ? 私たちのやることはコレで終わりってことだよね?」

『そういう意味で言えば、終わりだよ』

「やったー!! 強盗大成功~!!」


『これで立派な犯罪者だな。おめでとう』

「いや、全然めでたくないし~。まぁでも、コレでちょっとは幸せに近づけるかな」


「ねぇ、ハリスさんって、なんでずっと通話なの?」

『なんで、とは?』

「いや、DMでのやりとりとか、下見のバイトの時ならともかく、今はこうやって仲間になってるわけじゃん? それなのに、通話かメッセージでしか話したことないなと思って」


「ボスもダンさんも、ハリスさんの顔知らないって聞いたよ!!」

『諸事情により顔出しは避けてるんだよ。調査担当として動くことが多いから、顔バレはしない方が仕事がしやすいんだ』


「でも、ボスとすら会ったことないってのは変じゃない?」

『仕事はきちんとやってる。それで揉め事もなかったしな』

「そういうことじゃなくてさ~。ボスが捕まる前からの仲良しなんでしょ?」


『ギャングに仲良しというのは皮肉だね』

『それより、君とポールの関係の方が不思議に見えるけどね』


「まぁ、ポールって頼りなく見られるもんね」

『あの間抜け面じゃなければ、もう少し大人っぽく見えるんだけどな』

「前に1回だけ、私の弟と間違えられたことがあったよ。その時はすごく怒ってた」


「ポールも別に器用なわけじゃないんだけど、頑張って私に頼られようとしてるんだよね。そんなところがお兄ちゃんに似てて大好きっていうか……」

「え、なんで私こんな話してるんだろ。はっず~!!」

『こっちもまさか恋話が始まるとは思ってなかったよ』


『ところで、お兄さんが居るのか? 前に調べたときは出てこなかった情報だな』

「なに急に~。調べたとかきもーい」

『悪いね。疑り深いボスからの依頼なんだ』

「知ってる。ちょっとからかっただけ~」


「うちのお兄ちゃんはね、過労で死んじゃったんだ。親も私が小さいころに死んじゃったし」

『なるほど、それは残念だったね』

「この国じゃ、悪人として生きるか、善人として死ぬかの2択じゃん? だから私は、精いっぱい悪いことをして、寿命ギリギリまで生きて、出来る限り幸せに暮らすの」


「私の、お金持ちになりたいって言う分不相応な夢は、ポールが叶えてくれる。こっちではお兄ちゃんみたいなポールにたくさん甘えて、あっちでは本物のお兄ちゃんにうんと叱ってもらうんだ」

『ポール・ジュニアを信頼してるんだな』


「ねぇ、私の話ばっかり~。ハリスさんの家族は、どういう人だったの?」

『家族……。まぁ、いわゆる毒親ってやつなんだろうな』

「へぇ~意外。ハリスさん、賢いから、親もそういう感じかと思った」


『俺が賢いかはともかく、俺の親はそれなりに優秀であることは間違いないよ。俺の調査力やハッキングスキルは親のおかげだしな』

「ああ~、行き過ぎた教育ママって感じ?」

『それも違うな。簡単に言えば放任主義なんだ。生まれたばかりの頃から、まともに相手してもらった記憶はない。今の技術は、あの人たちの背中をみて勝手に覚えた』


『親から何かしてもらった記憶はない。しいて言うなら生んでくれたことだけだ』

「すっご~。それで、そこまで賢く生きていけるなんて、ハリスさんがすごいだけじゃん」


『……いや、覚えた技術の使い方を教えてくれたのはオタだったんだ。アイツが、チャイルドスラムからいっぱしのギャングになりたての頃にスカウトされた』

『アイツが俺を誘ってくれなけりゃ、今の俺はないな』


「そんなに仲良しなのに、顔は見せないの?」

『……それとこれとは別の話だ。それに、アイツは特にそういうのを気にするタイプじゃないから』


「でも私は気になる~」

『なんでそこまで俺に執着する?』

「だって友達じゃん。友達の顔を知らないままって寂しくない?」


『おいおい、俺たちが仲良しこよしのグループに見えたか?』

「でも、ボスとは友達でしょ? 仲良くなかったら、一緒に仕事なんて出来ないし」


『仲良くなくても仕事はできるぞ。リチャードとは友達じゃないが、今回の強盗のパトロン兼資金洗浄役として働いてもらってるわけだからな』

「ぱとろん? しきんせんじょー? 警察とかクリーニング屋さんの話?」

『…………まぁ、大体似たようなものだ』


「今、説明諦めたでしょ!? 言ってる意味はよくわかんないけど、私はボスもダンさんもハリスさんも友達だと思ってるよ!! 一緒に仕事する仲間!!」


『子供のごっこ遊びじゃないんだぞ? 俺たちがやってるのは本気の強盗だぜ』

「さすがにそのぐらいは分かってるよ。でも、お互いギスギスしてるより、仲良しこよしでいる方が上手く行くと思うし。それに、今はなんでしょ?」


『……はぁ、まぁそうだな。顔を見せるのは、まだ先だが、そのうち考えておくよ』

「やった~」

『まるで、オタと口論してる気分だったよ。感情論でごり押してるかと思えば、いきなり合理的に相手の虚をつくやり口。飄々としてる所もそっくりだ」


「うーんと、よくわかんないけど褒めてる?」

『褒めてるよ。一応な』

「ならありがと~」


『無意識でそれが出来るとは、末恐ろしいね』

『どうやら、向こうも帰ってきたみたいだ。お友達を出迎えてやったらどうだ?』

「そーする!! ハリスさんのことも、ちゃんと出迎えてあげるからね~!!」


『…………遠慮しておく』

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