第13話 ヘッドホン

「なんかクラスメイトと五人ぐらいで帰った時に、ヘッドホン途中からA子ちゃんと二人きりになったんよ」

毒舌先輩が帰り道に話し始めた。

「もういいってその話」

どうやらヘッドホン先輩の鉄板ネタらしい。本人は語られるのを嫌がっているが。

「A子ちゃんは気をきかせてさ、ヘッドホンにめっちゃ話を振ってあげたんだって」

「それであの名言か」

どうやらブロッコリー先輩も知っているようだ。

「そう」

二人の先輩はヘッドホン先輩の両サイドでニコニコと笑う。

「「『話す必要ある?』」」

「やめろって…」

A子ちゃん先輩は可哀想でならないけれど、部活の後輩、ファンとして庇わせていただきたい。ヘッドホン先輩に悪意はないのだ。

ただひたすらに下手。

「後悔してるん?あの時ちゃんと話してれば今頃違ったかなって」

「…チョット」

庇ったものの、こっちの方が問題があるのではないかと思ってしまう。


「先輩のサイト保存してるんですよ。本当に」

「先輩が書いた本借りていいですか」

「先輩の本めちゃくちゃ面白かったです」

そう言った時に見せる、体育座りをしながらの、不器用なはにかみ。


「お前もAirPods買ったら?」

「いや俺はヘッドホンあるからいい」

「あーあの、人を寄せ付けないヘッドホンか」

「そんなつもりはない…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る