第12話 ブロッコリー

私たち文芸部員は、文化祭の準備が始まった今、ブロッコリー頭を、仰いでいる。


我らが部長。ブロッコリー先輩。

「生徒会はクソだ」

部活に初めて足を運んだ時に聞かされた問題発言。入る部活を間違えたかもしれないという恐怖と、ここをもっと知りたいという好奇心で溢れたのを覚えている。

先輩は思想は強いが染めようという意思はなく(問題発言の前に「今から思想強くなりますね」とつける)、私も含め部員(?)たちは確固たる自分を持っている。だからこそ生まれる幸せな空間。


一度潰れかけた文芸部を、生徒会と揉めながら立て直した。

当時部員は一人、今年になって、同学年(ヘッドホン先輩)と後輩たちは増えたが、先輩はいない。二年生ながら部長を務めている。

熱い男だ。

「生徒会はクソだ…」

文化祭で販売する部誌。

色々あって原価(私たちの労働代ではなく製本業者に頼んだ金額のみ)が一冊450円になった。私たちはこの中身が面白いと知っている、値段に見合う価値があると、しかし文化祭のお客さんたちはどうだろうか。

当初の発注予定は百冊。

生徒会からのルールとして、利益をマイナスにしてはならないと釘を刺されている。当たり前と言えば当たり前だが、シビアだ。

「どうする…?」

結局最後には、全員がブロッコリー先輩を頼る。

ブロッコリー先輩はその頭をかいた後、一息置いて、

「百冊で行こ」

と言った。

ノウハウも設備も金も人脈もない。

だけどこの人の元でならなんかやってける気がする。


「いいなー。俺も髪染めよっかなあー」

「緑にしましょうよ」

「ブロッコリーって思ったでしょ絶対!!」

「白もいいですね」

「カリフラワー!!」

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